<女は筋肉 男は脂肪/第2章:体力・運動能力の男女差はなぜ生まれるか(2)>
体力・運動能力の男女差
こうした体力や運動能力にも、明らかに男女差があります。
運動能力とは、体力をベースに、走・跳・投といった運動やスポーツに必要な基本的スキルを加えた能力のことです。
その差を正しく理解すれば、男女それぞれに見合った方法で、それぞれの能力を確実に、そして安全に増やすことができます。
年齢差を無視して、シニアと若い世代に同じやり方を強いるのは逆効果ですし、とても危険です。それと同じように、体力や運動能力の男女差もきちんと考慮すべきものなのです。 では、なにが体力や運動能力の男女差を生むのでしょうか。 それには次のような要因が考えられます。
●体格の違い
体格は、体形・体つき・体位などともいい、「体全体の骨組み(骨格)・肉づき(筋肉)・太りぐあい(脂肪)といったさまざまな外観的(視覚的)・数量的な特性の総和」ともいえます。身長、体重、胸囲、座高、皮下脂肪厚、体各部の長径・幅径・周囲径などの計測値であらわすことができます。
生まれつきの遺伝的要因と、生まれた後の環境的要因(栄養、運動、疾病、経済状態など)や発育による変化によって決まります。
ここで、体格といえばこれ、といわれる身長と体重の男女差をみてみましょう。
成長していく過程での変化を曲線であらわした発育曲線(成長曲線)では、身長も体重も12歳ごろまで男女差はほとんどありませんが、それ以降はいずれも、男子が女子を上回るようになります(「平成20年度学校保健統計調査報告書」文部科学省生涯学習政策局調査企画課、2009)。
発育速度(年間発育増加量)では、身長の最大発育年齢は女子9・5歳に対して男子11・5歳で、女子のほうが2年早くなっています。いっぽう、体重の最大発育年齢は、男子は約12歳、女子は11歳で、こちらも女子のほうが1年早くなっています。
身長の最大発育年齢は、1950年に比べて男女とも年々早期化し2歳ほど若くなっていて、生活環境全体の変化が強く影響していると考えられます。
●身体組成の違い
体格と並んで、体力の男女差を生むもう1つの大きな要因が「身体組成」です。
身体組成は、文字どおり体を組織する成分のことで、個体・組織・細胞・分子・原子の5つのレベルに分類されます。そのなかで組織レベルを構成しているのが、骨格筋、脂肪組織、血液、骨、皮膚、内臓諸器官などです。
たとえば、体重が70㎏の成人男性の場合、もっとも重量があるのが骨格筋で28㎏、体重に対する割合は40%です。続いて、脂肪組織が15㎏で21・4%、血液が5・5㎏で7・9%、骨が5㎏で7・1%、皮膚が2・6㎏で3・7%、残りの脳、肝臓などの消化器と心臓・肺などの呼吸・循環器が5・4㎏で7・7%となっています。
(つづく)
※「女は筋肉 男は脂肪」(樋口満、集英社新書)より抜粋