<女は筋肉 男は脂肪/第4章:今、気にすべきは 女性は「筋肉」をつける・男性は「脂肪」を減らすこと(6)>

メタボはどのようにして起こるか

内臓脂肪の蓄積が、なぜ高血糖・脂質異常・高血圧を招き、動脈硬化につながり、糖尿病、脂質異常症、高血圧症を発症させ、悪化させてしまうのでしょうか。

偏った食生活や運動不足といった不健康な生活習慣に遺伝的要因が加わって肥満になると内臓脂肪が蓄積し、脂肪細胞が肥大、増殖します。

この脂肪細胞では、「アディポサイトカイン」という、脂質代謝や糖代謝といった体の機能調節を円滑にするさまざまな生理活性物質がつくられ分泌されています。しかし、脂肪細胞の肥大、増殖によってアディポサイトカインの分泌異常が起こり、困ったことに、その悪玉物質の分泌が増え、善玉物質の分泌が減ってしまうのです。

メタボリックシンドロームによる内臓脂肪の蓄積は生活習慣病を引き起こす原因となる

アディポサイトカインの悪玉物質には、TNF-α、レジスチン、アンジオテンシノーゲン、PAI-1などがあり、善玉物質にはアディポネクチンがあります。

TNF-α、レジスチン
インスリンの効きが悪くなり、血液中の糖が使われなくなって血糖値の上昇を招き、動脈硬化が進んで糖尿病へとつながります。

アンジオテンシノーゲン
血圧を上昇させる作用があり、分泌が増えると高血圧を招く一因となります。

PAI-1
血栓をつくりやすくする物質です。血栓が大きくなって血流をさえぎり、血管がつまりやすくなります。動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞の危険が高まります。

レプチン
通常は満腹中枢に作用して食欲をおさえる働きをしますが、脂肪がたまりすぎるとその働きが悪くなり、満腹中枢が適切に反応しなくなって食べ過ぎを助長させてしまいます。交感神経を活性化させるために血圧を上昇させる作用もあります。

アディポネクチン
傷ついた血管壁を修復して動脈硬化を予防するほか、インスリンの効きをよくして糖の代謝を高めたり、血圧を低下させたりする作用があります。内臓脂肪が増えるとアディポネクチンの分泌は減少し、血糖値を上昇させます。

このように、メタボリックシンドロームによる内臓脂肪の蓄積は、不都合な悪玉物質の分泌を増やすだけでなく、善玉物質の分泌を減らしてしまうアディポサイトカインの分泌異常を引き起こし、直接的に動脈硬化の進行を促進して、生活習慣病の発症リスクを高めてしまうのです。

内臓脂肪を軽くみてはいけません。健診によってメタボリックシンドロームをいち早く発見し、内臓脂肪を減らす取り組みをすぐにでもはじめましょう。

(当サイトでは第5章、第6章は掲載いたしません。書籍でご確認ください)

※「女は筋肉 男は脂肪」(樋口満、集英社新書)より抜粋