<スポーツする人の栄養・食事学/第1章 からだにいい食事や栄養とはなにか(7)>
Q、食が細く、栄養が足りているか不安です。なにか工夫できることはありますか?
A、食が細い、つまり少食によってまずはじめに問題になるのが、糖質、脂質、たんぱく質といったエネルギー産生栄養素の摂取不足です。長年の食習慣で少食がなかなか改善できなければ、朝昼晩の1日3食に補食をプラスして食事の回数を増やすことで、1日に必要なエネルギー量を摂取できるようになります。
アスリートにとって、エネルギー産生栄養素である糖質(4kcal/g)、脂質(9kcal/g)、たんぱく質(4kcal/g)のいずれか1つが不足しただけでも、大きな影響が出てしまうものです。
糖質が不足してしまうと、筋肉に貯蔵されているグリコーゲンのみならず、筋たんぱく質までがエネルギーとして使われるようになり、筋肉がやせ細り、体力が衰えてしまいます。糖質は、とりすぎると体脂肪の増加につながりますが、スポーツをする人ではエネルギー消費量が格段に増えるため、高強度で長時間にわたるトレーニングをするアスリートにとって糖質の摂取不足は致命的です。
長時間にわたる低・中強度の運動でのエネルギー源として有効な脂質も、不足すれば筋肉を動かして運動パフォーマンスを維持するのが困難になります。
たんぱく質の主要な役割は、体づくりですが、少食によってエネルギー摂取量が低下すると、筋肉中のたんぱく質がエネルギーに振り向けられてしまい、それによって、筋量が減少してしまいます。
少食の理由と改善の方法
さて、その少食ですが、出された食事にあまり箸をつけずに終えてしまう、食べること自体にあまり興味がない、食べず嫌いが多い、食べるペースが遅く食事の時間が長くなって途中でやめてしまうなど、長年の食習慣の影響も考えられます。生まれつき胃が小さい、胃下垂である、食事をしても胃腸が動き出すのが遅くすぐに満腹感を覚えるなどの体質的な問題もあります。
また、試合前の極度の緊張によってストレスを感じると自律神経が乱れ、消化を促進する副交感神経の働きが抑えられて食欲不振となり、十分な食事がとれない事態を招いてしまうこともよくあり、少食の原因はさまざまです。
少食がなかなか改善できないのであれば、1日の食事の回数を増やすのも1つの方法です。あくまでも、朝昼晩の1日3食をメインにしたうえで、おにぎりやサンドイッチ、バナナなどをいつも携行して、補食として手軽に口にするといいかもしれません。1回の食事の量は少なくても、回数を増やせば1日に必要なエネルギー量を摂取できるようになるからです。
「量より回数」を長く続けていくと、少食の人でも1回の食事の量が自然と増えてくるものです。
(つづく)
「スポーツする人の栄養・食事学」(樋口満、集英社新書)より抜粋