<スポーツする人の栄養・食事学/第1章 からだにいい食事や栄養とはなにか(8)>
Q、ケガや故障でスポーツができない間、食事で気をつけることはなんですか?
A、ケガや故障で練習を休む場合、休む期間はできるだけ短縮する、つまり治癒率を高めてできるだけ早く練習に復帰することが望ましく、食事がとても重要になってきます。もっとも重要な栄養素は、たんぱく質です。
ケガや故障で身体活動が極端に低下すると、エネルギー消費量が減ってしまいます。特に、寝たきり(ベッドレスト)を強いられるような重症の場合は、筋量が減り筋力が衰えるために、たんぱく質が適切に摂取されないと回復を遅らせてしまいます。
しかし、エネルギーの摂取過多も体脂肪量や体重の増加につながるために、せっかくケガから回復してもベストのコンディションに戻すには時間がかかります。体重を増やさないためには、低脂肪の食材(鶏のささ身や白身魚など)の使用、油を使わない調理(焼く、蒸す、煮る、茹でるなど)、油脂量の少ない調味料や香辛料の使用を心がけるといいでしょう。
食事の量もいつもの70~80%程度に抑えるようにして、消費と摂取のエネルギーバランスを保つことも重要です。
治療中の食事で大切な栄養素
治療中の食事でもっとも重要な栄養素は、たんぱく質です。たんぱく質は、筋肉や血液などの体の組織や細胞をつくる体組成成分(体たんぱく質)です。体たんぱく質の合成の程度は、損傷した筋肉や、靭帯、腱などの結合組織の治癒回復に大きく影響を与えます。
入院中の病院食では十分なたんぱく質摂取につながらない場合、事情が許されるのであれば、筋量維持や体たんぱく質合成のために補食(間食)や栄養補助食品で補うことも必要でしょう。たんぱく質の摂取量は、減らしてはいけません。
骨折の場合には、骨の主成分であるカルシウムを補充するために多めの乳製品と、ミカン、レモン、グレープフルーツ、イチゴ、キウイフルーツといった果物などによるビタミンCの摂取も忘れてはいけません。
(つづく)
「スポーツする人の栄養・食事学」(樋口満、集英社新書)より抜粋