<スポーツする人の栄養・食事学/第2章 スポーツをする人はなにをどう食べたらいいのか(10)>
Q、スタミナをつけるには、どのような食事が好ましいですか?
A、スタミナ不足は、糖質の不足によるエネルギー源の不足が原因で生じます。糖質に加えてビタミンやミネラル類をしっかりとれば、体脂肪が減って動きやすくなり、筋グリコーゲンが増えてパワーがつく理想的なかたちでスタミナがつきます。
スタミナ(stamina)とは、「持久力、体力、精力」「肉体的な耐久力」「持ちこたえられるだけのエネルギー」といった意味で、「スタミナをつける」「スタミナが切れる」「スタミナは十分にある」「スタミナが不足する」などの言い方がよくされます。
マラソンのレース中盤まで快調に走って優勝をねらえる勢いだった選手が、徐々に遅れて先頭集団から脱落してしまう光景を、私たちは何度も見ています。
はたして、その選手になにが起こったのでしょうか。
さまざまな理由が考えられますが、はっきりいえるのは「スタミナ切れ」です。42・195kmを走り切るだけのエネルギーを持ち合わせていなかったか、あるいはレース途中でのペースアップやハイペースに巻き込まれてエネルギー不足を招いてしまったのでしょう。
もし、レースの後半で、筋肉を動かすエネルギー源である糖質を、給水ポイントで摂取できていれば、結果は少し違っていたかもしれません。実際に、後半の重要なタイミングでドリンク補給をしくじったために、勝てるレースも勝てずに悔しい思いをしたという選手の証言も聞こえてきます。
糖質不足によるエネルギー切れ
こうしたスタミナ不足は、糖質の不足によるエネルギー源の不足が原因で生じます。私たちの体が動くのは筋肉が収縮するからで、そのときにエネルギーとして使われる物質がATP(アデノシン三リン酸)です。このエネルギー源物質をつくり出す主たる原料となるのが糖質(グリコーゲン)だからです。
しかし、筋肉内に貯蔵されているATPの量はごくわずかで、食事によってしっかり糖質をとって筋グリコーゲンを貯蔵しておかないと、ATPの円滑な再合成ができなくなってしまうのです。
副菜からビタミン・ミネラル摂取
ごはん、麺類、パンなど主食として摂取する糖質に加えて、副菜としてビタミンやミネラル類をしっかりとる食事に改善すれば、体脂肪が減って動きやすくなり、筋グリコーゲンが増えてパワーがつくという理想的なかたちでスタミナ不足が解消できます。
(つづく)
「スポーツする人の栄養・食事学」(樋口満、集英社新書)より抜粋