岡山大学は自立高齢者において、1秒間に発音できる「タ」と「カ」の回数が多い(=舌がよく動く)と栄養状態が良好であり、栄養状態が良好な人は要介護の前段階である「フレイル(加齢に伴う心身の虚弱)」状態の人が少ないとの研究成果をこのほど発表した。

同成果は、岡山大病院の歯科・予防歯科部門の澤田ななみ医員、岡山大学術研究院医歯薬学域予防歯科学分野の森田学教授らの研究グループによるもので、舌をしっかり動かすことで、フレイルを予防・改善できる可能性があるとしている。

フレイルとは、加齢に伴う様々な機能の低下により、日常生活に支障が出たり、要介護状態になりやすい状態のこと。口の機能のわずかな衰えを「オーラルフレイル」と言い、オーラルフレイルとフレイルの関連性やオーラルフレイルと栄養失調、栄養失調とフレイルがそれぞれ関係することは報告されていたが、実際にオーラルフレイル、栄養状態、フレイルの関係を詳しく調査した研究はなかった。

そこで研究グループは、岡山大学病院予防歯科外来を受診する60歳以上の患者を対象に、年齢、性別、全身疾患、歯数、歯周状態、口腔機能、栄養状態および身体機能を調査。これらのデータを元に分析したところ、下の図のようなモデルが成り立った。

舌がよく動く人は栄養状態が良好で体が元気の図

この結果、1秒当たりに発音できる「タ」「カ」の回数が多く、舌がよく動くと栄養状態が良好であり、栄養状態が良好であるとフレイルの者が少ないことが分かった。また年齢が高いほど舌が動きにくく、栄養状態が悪く、フレイルの者が多いことも明らかになった。

澤田医員は「身体の健康とお口の健康はつながっています。元気な身体で楽しい人生を過ごすためにも、むし歯や歯周病といった病気の側面に注目するばかりでなく、お口の機能の面も大事にしていただきたいです」とコメントしている。