子どもを持つ男性の在宅勤務日が増えると「イクメン化」することが、このほどの研究によって実証された。

当発表は、東京大学大学院経済学研究科の井上ちひろ氏(博士課程学生)、デューク大学経済学部の石幡祐輔氏(博士課程学生)、東京大学大学院経済学研究科の山口慎太郎教授の研究チームによるもの。計量経済学の手法である一階差分モデルと操作変数法を組み合わせることで、在宅勤務が男性の家事・育児参加に与えた因果効果を推定した。

推定の結果、在宅勤務を行う日が週に1日増加すると、子どもを持つ既婚男性が家事にかける時間は6.2%増加し、家事・育児に関して夫の役割が増加したと回答する割合が9.3%上昇することが分かった。また、家族と過ごす時間は5.6%増加し、(仕事よりも)生活を重視するように意識が変化したと回答する割合は11.6%も上昇した。

注:エラーバーは 95%信頼区間を表します
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これらの結果は、在宅勤務が行動・意識の両面で男性の家族志向を高めることを示唆する。一方で、仕事に関する質問項目についても同様の分析を行ったが、調査での回答者の申告に基づく限り、生産性に対して在宅勤務が悪影響を与えるという結果は得られなかった。

在宅勤務に関する研究の多くは女性の仕事と家庭の両立に着目しており、これまで、男性の行動・意識両面における家族とのかかわりへの影響は明らかになっていなかった。

多くの先進国では、女性に家事労働・育児負担が集中しており、これが女性の社会進出の妨げや低出生率の原因の1つになっていると考えられている。中でも日本における家事労働・育児負担の男女間格差は世界最大。そのため、在宅勤務が家事労働と育児の男女間格差を是正しうるのかは、日本社会にとっても注目すべき研究課題と言える。

男性の家事・育児参加の促進は、出生率向上・少子化解消につながる重要な社会的課題であり、本研究の結果がコロナ禍終息後のあるべき働き方について示唆を与えるものだとしている。