日本をはじめとする先進国では、若い人の3割ぐらいが朝食を食べていないという。朝食を食べた方が健康になるのか、食べない方が良いのか。特にダイエットに関して、朝食を食べた方がやせるのか、太るのかについて多くの関心が持たれ、様々な情報が飛び交っている。
多くの研究が、朝食習慣は健康に良いことを示しており、体重を抑える作用があると考えられてきたが、その分子メカニズム(遺伝子レベルでの説明)は十分に解明されていなかった。この長く続いてきた「朝食論争」について、名古屋大学の研究グループが「朝食を食べないと体重が増え、筋肉量は低下する」という新たな研究結果を発表した。
同研究グループは2018年、高脂肪食を食べさせた実験動物(ラット)を使い、朝食欠食が、体内時計の異常につながり、結果として体重増加をもたらすことを遺伝子レベルで明らかにしていた。今回の研究では、マウスに普通食を与え、朝食を摂取したマウスと、活動期の最初の4時間を食べさせずに朝食を欠食にさせたマウスを比較。その結果、朝食欠食が体内時計の異常をもたらし、さらに筋肉萎縮をもたらすことを初めて明らかにしたという。
原因は体内時計の異常によるもの
体重の増加は、朝食欠食によって体温や肝臓、脂肪組織の時計に異常が生じ、脂肪組織量が増加したためだという。筋肉量の低下も、筋肉の時計の異常によるものと考えられるとしている。
これらの結果から、朝食習慣は体内時計を正常化させるため、太りにくい体質を作る可能性があることが分かった。朝食は、子どもには十分な栄養素を供給する役割があり、成人にはメタボリックシンドロームを抑える効果が期待される。さらに老年期には筋肉萎縮を抑制してロコモティブシンドロームやサルコペニアの予防につながる可能性があることも確認できたとした。
本研究成果は、2022年3月11日付イギリス科学雑誌「British Journal of Nutrition」オンライン版に掲載された。