肥満の人は、歯を失う原因となる歯周病を発症するリスクが高く、また悪化することが知られている。肥満と歯周病の関連性は報告されていたものの、具体的なメカニズムは分かっていなかったが、このほど岡山大学は動物実験により、このメカニズムを明らかにしたと発表した。

岡山大学学術研究院医歯薬学域予防歯科学分野の丸山貴之助教、森田学教授らの研究グループは、高脂肪食を与えた肥満ラットと普通食を与えたラットの歯槽骨の吸収状態を比較し、肥満ラットのほうが歯槽骨の吸収が大きい、すなわち歯周病が進んでいることを確認した。続いて、血液中のmicroRNA、歯周組織中のmRNAを網羅的に解析し、肥満ラットに特徴的な血液中のmicroRNA(8種類)、歯周組織中のmRNA(23種類)を列挙した。その後、データベースを用いて、血液中のmicroRNAと歯周組織中のmRNAの関連性について検討した。

岡山大学プレスリリースより
岡山大学プレスリリースより

その結果、肥満にともなう血液中のmicroRNA(4種類:miR-759、miR-9a-3p、miR-203b-3p、miR-878)の変化が、歯周組織の遺伝子発現(7種類:Ly86、Arid5b、Rgs18、Mlana、P2ry13、Kif1b、Myt1)を変化させ、その一部の遺伝子が歯槽骨の吸収に関連していることを解明した。

「歯を失う主な原因である歯周病を予防するためには、歯科医院での歯周病治療が重要ですが、全身の健康にも目を向け、肥満の予防・改善を心がけることも大切であると考えられます」と丸山助教は述べている。