マグロは、日本人の大好物のひとつですが、イタリアの島部シチリアやサルデーニャでは、5月下旬から7月上旬がマグロの季節です。

 この時期にマグロが回遊してこの地方にやってくることから、イタリアには伝統的なマグロ漁がありました。「マッタンツァ」と呼ばれるもので、沿岸に設置した大きな定置網の中にマグロを追い込み、最終的に小さな部屋のようにした網の中に閉じ込め、漁師がつかみ捕りする、という豪快な漁法です。現在は、海流の変化からこの地域を回遊するマグロの量が激減してしまい、なかなか見ることができない希少な漁法となってしまったそうです。

7月上旬までイタリアの魚市場では生のマグロが出回る
7月上旬までイタリアの魚市場では生のマグロが出回る

 そんなイタリア人もマグロが大好き。この時期、魚市場では冷凍していない生のマグロが出回ります。日本のように生で食べる習慣はないため、多くは切り身にしてシンプルに塩で味付けし、グリルして食べています。

 日本人に大人気の大トロや中トロなどの脂の多い部位はあまり好まれず、赤身の方が人気です。また、大量にマグロが捕れていた昔からの習慣で、さまざまな加工品を作っています。イタリアの家庭では、オイル漬けにした缶詰や瓶詰(いわゆるツナ)を常備していて、パスタやサラダに入れたり、ピッツァのトッピングにしたりと大活躍。珍しいものでは、生ハムのように塩漬けしたり、燻製をかけたりした保存食があり、産地ならではの珍味として地元の人々や観光客にとても人気があります。

ビタミンEと摂取して抗酸化作用をアップ

 マグロの赤身は、イノシン酸やタウリンが豊富で、あっさりしているのにうまみがしっかりとあるのが特長。またマグロには、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれることでも知られていますが、赤身は特にタンパク質が豊富で過酸化物質を分解する酵素の成分、セレンを多く含んでいます。

マグロのカツレツ
マグロのカツレツ

 セレンはビタミンEと一緒に摂取すると、より抗酸化作用が強くなるということで知られており、今回はマグロをビタミンEの多いひまわり油でカツレツに仕立てました。植物性油の中でもひまわり油、サフラワー油、綿実油、米油などは特にビタミンEが豊富なオイルです。家庭で使うオイルにちょっと気を付けるだけで、微量ミネラルも摂取しやすくなります。

 そろそろ暑さによる夏バテも心配な季節です。加熱をすることで衛生的にも安心できるマグロで、身体の疲れをとって元気に暑さを乗り切りましょう。