健康に気遣い、日々なるべく野菜を多くとろうと心がけるのは日本人もイタリア人も同じ。なるべく旬の野菜をとるように、と心がけている人は多いものです。

 ところで、イタリアの気軽なレストランでは、肉や魚などのメインの料理の皿に付け合せの野菜がついて出てくるのは稀なこと。長きにわたる習慣のため、イタリア人にとっては当たり前のことですが、日本から旅行に行った際にレストランでオーダーしたメイン料理のお皿に、肉を焼いただけのもの、魚を揚げただけのものがボン! と乗っているだけの姿は、あまりのそっけなさに驚くこともあります。

 実はレストランのメニューには「コントルノ(付け合せ)」の欄があり、肉や魚に付け合せが欲しい場合は、別にオーダーをしなくてはならないのです。コントルノの欄には季節の野菜の名前だけが記載してあることが多く(ホウレン草、チコリ、ブロッコリーやジャガイモなど)、好みの野菜を選んだ後、茹で野菜のようにして食べるか、炒めて食べるかを選択するのです。

 そのときに出てくる野菜の茹でっぷりには、大抵の日本人がびっくり。ホウレン草など、クタクタになったものがやってきます。日本のおひたしのように、色よくさっと茹でて野菜の持ち味を活かす、という調理法とは真逆の、クタクタになるまで長時間茹でたものが、イタリアの野菜料理の定番だからです。

 日本では、食感や野菜の香りを残すように神経をとがらせて茹であげるのが常識。何でこんなにクッタクタにしてしまったのかしら…と最初は抵抗感を感じる人がほとんどですが、気が付けば多くの人がとりこになってしまうのです。

 もともと日本とは、野菜を育てる土壌も水質も違うイタリアでは、しっかり茹でてアクを取り切らないと美味しくは食べられません。野菜は、とろりとした歯ごたえこそ美味しく、そしてクタクタに茹でてこそ、その野菜本来のもつやさしい味わいの魅力が感じられるのです。

食べるカボチャのスープ

カボチャのあらごしスープ
カボチャのあらごしスープ

 今回紹介するのは、イタリア式にカボチャをクタクタに茹でて、粗くつぶしたスープ「カボチャのあらごしスープ」です。クタクタに茹でたものをそのままピューレ状にして食べても美味しいですが、スープにするとさらに食べやすくなります。

 カボチャのスープというと、たくさん牛乳を加えたり、コンソメキュープを加えたりすることが多いと思いますが、カボチャ本来の味わいをしっかりと引き出すように、鍋に蓋をしてコトコト煮込みます。その煮込んだカボチャを木ベラでザックリつぶすだけ、手間もかからない「食べるスープ」です。

 カボチャはビタミンC、E、βカロテンをたっぷり含む緑黄色野菜。脂溶性のβカロテンの吸収率をアップさせるには、油脂を使って調理するのが最適です。しっかりオリーブオイルで炒めてから水分を加えましょう。

 風邪が気になるこれからの季節。しっかりとタンパク質をとり、副菜にはビタミンCやβカロテン豊富なメニューを取り入れて、予防をしていきましょう。