梅や、グレープフルーツ、レモンなどのかんきつ類に含まれる成分で、さわやかな香りと酸味が特徴のクエン酸。口に入れた時、あの「酸っぱ~い」と感じる正体がクエン酸です。
酸っぱい成分がクエン酸
クエン酸は「疲労回復に役立つ」「熱中症予防につながる」「ダイエット効果がある」と言われていますが、実はその効能について未知の部分はまだまだ多いのです。それでも疲労回復、ダイエット効果があると言われるのは以下の理由からです。
(1)糖や脂肪を代謝してエネルギーを生み出すクエン酸回路の構成成分だから。
(2)ブドウ糖をエネルギーとして使用する場合、ピルビン酸に変化した後、疲労物質といわれる乳酸(※注)になるが、クエン酸は乳酸をピルビン酸に戻すことができるから。
「クエン酸の疲労回復効果」を記す文献は複数ありますが、国立健康・栄養研究所の「健康食品の安全性・有効性情報」には「クエン酸が疲労回復効果やダイエット効果があるということは、ヒトでは信頼できる十分なデータがみつからない」と記載されており、今も研究が進められているところです。
クエン酸を多く含む食品
クエン酸を多く含む食品は次の通りです。
・かんきつ類(レモン・グレープフルーツ・夏みかんなど)
・キウイ
・イチゴ
・梅干し
・食酢(穀物酢・米酢・黒酢・リンゴ酢・バルサミコ酢・ワインビネガー)
ミネラルの吸収を高める効果
明らかなのは、これらに含まれるクエン酸にはミネラルの吸収を高める効果があるということ。カルシウム、鉄、マグネシウムなどの金属ミネラルは、そのままでは水に溶けない不溶性ですが、クエン酸とくっついてクエン酸塩になると、キレート効果で水溶性になり、吸収されやすくなります。
つまり、アスリートに必要な栄養素の吸収を高めるために、クエン酸を一緒に摂取することは有用です。熱中症による脱水症状を改善するには水分だけでなく、ナトリウムなどのミネラルの摂取が大切で、クエン酸はそのミネラルの吸収をサポートする働きも期待できるので「熱中症対策に有効である」と考えられているのです。
食事でこまめに摂取がベター
クエン酸は時間の経過とともに体外に排出されてしまうため、食事から摂取する場合、過剰症の問題はありません。しかし、サプリメントなどで摂取する場合の安全性に関しては信頼できる情報がありません。まれに下痢、吐き気などの胃腸障害や、塗り薬としての使用で日光や紫外線による過敏症が起こることがあるため、注意が必要です。
逆に言うと、クエン酸を食事から摂る場合、1日何回かに分けてこまめに摂ること、毎日続けて摂ることが大切です。食事の時にかんきつ類を食べる、運動後に梅やレモンジュースを飲むなど、こまめに摂取すると良いでしょう。
殺菌効果で腐敗防止、お弁当にも
また、クエン酸には殺菌効果があり、細菌の増殖を抑えて食べ物の腐敗を防ぐ効果もあります。夏のお弁当には、梅干しをご飯全体にまぶすようにしたり、レモン汁や梅肉ソースでお肉を味付けたり、酢の物を取り入れたりしてみましょう。
※参照:国立健康・栄養研究所「健康食品」の 安全性・有効性情報
※注:乳酸は疲労物質ではなく、エネルギー源であるとの説が有力
【管理栄養士・今井久美】