トレーニング後の食事では、タンパク質を重視している方が多いように思います。炭水化物(糖質)を多く含むご飯、パン、麺類、もちなどの主食は、エネルギー源になる「だけ」ではありません。競技のパフォーマンスを高めるため、疲労回復のため、身体を作るため、集中力を高めるためなど全てにおいてとても重要で、トレーニング後の食事でもしっかり摂る必要があります。
ご飯とパン、どちらがいいのか
「ご飯とパン、どちらがいいか」、もしくは「パンが好きなのでパンでいいか」とよく聞かれますが、それぞれに良いところがあります。
ご飯の利点は、水分が一緒にとれる、パンよりも腹持ちが良い、血糖値を長く維持しやすい(少しずつ長時間エネルギーに変えられる)、どんな料理とも合わせやすい、脂質が少ないので消化されやすいなど。一方のパンは、常温で持ち運びしやすい、ご飯よりも手軽に食べられる、おなかにたまりにくい(感じがする)などがあります。ただし、パンばかり食べていると、脂質や塩分を摂りすぎる場合もあるので、状況に応じて上手に利用するとよいでしょう。
麺類ならうどんやそうめんがおすすめです。プロアスリートも活用しているパスタも良いのですが、合わせるソースによってはかなり脂質が高いものもあるので気を付けましょう。体重や体脂肪が気になる場合や運動前などは、量を調整し、脂質少なめのソースを選びましょう。
エネルギーの素・糖質とは
ご飯やパン、麺といった主食の主な要素「炭水化物」は、「糖質」と「食物繊維」を合わせたものです。エネルギー源となるのは糖質で、食物繊維は人間の体では消化できず、ほぼエネルギーになりません。
糖質は、形状により「単糖類」「少糖類」「多糖類」と大きく3つに分けられます。真珠に例えて説明すると、ネックレスのように粒がたくさん(数百から数千個)くっついている状態が「多糖類」で、穀類やイモ類に含まれるでんぷんなどが属します。イヤリングのように2~10個くっついているのが「少糖類」で、砂糖(ショ糖)やオリゴ糖、乳糖など。真珠が1個ずつバラバラの状態なのが単糖類で、ブドウ糖や果糖が当てはまります。
単糖類は人間が消化吸収できる最小単位となり、体内での消化吸収の速さは、単糖類(ブドウ糖、果糖)、少糖類(砂糖)、多糖類(でんぷん)の順です。どの糖が良いか、悪いかではなく、糖が体にエネルギーとして入ってほしいタイミングを考えてとることが、食を味方につける基本となります。
「単糖類」「少糖類」「多糖類」のとり方
でんぷんは、たくさん食べることができるので、ほかの糖よりも1度にたくさんのエネルギーを得られることがメリットです。砂糖は日常的に摂取しやすいものの、ブドウ糖と比べるとエネルギーになるまで少し時間がかかります。
果糖は、摂りすぎると体内で脂肪に変わりやすいといわれます。また、運動前に摂り過ぎると、おなかが緩くなることもあるので注意しましょう。
ブドウ糖はすぐに消化吸収されるため、運動後に失われたグリコーゲンの回復を早めるのに効果的で、スポーツドリンクや果汁ジュース、果物などでとることができます。その反面、血糖値上昇を長時間維持することはできないので、空腹状態で大量に摂取してから運動することは避けましょう。
私がサポートしている大学サッカー部の監督によれば、カフェイン入りのエナジードリンクを飲んでから試合に挑む選手は試合中、急激にパフォーマンスが低下するそうです。まだまだ正しい使い方が浸透できていないと実感しており、根気よく伝えています。
「糖質制限」が推奨されているが…
「炭水化物を2種類以上、合わせることは良くない」と耳にしたことがあるかもしれませんが、これは私たち保護者世代の生活習慣病予防に向けた言葉です。その延長で「糖質制限」がすすめられることがありますが、成長期の選手には当てはまりません。
特にスポーツをする成長期の10代は主食、糖質が必要で、たっぷりと食べさせるためにあえて2種類以上合わせる工夫もします。次の例を参考に1食で組み合わせてみてください。
ご飯とパンやコーンフレーク、塩焼きそば、ジャガイモ料理、コーンを使ったメニュー、みそ汁の中にそうめんを入れてにゅうめんに、カボチャスープやジャガイモスープ(でんぷんの多い野菜を活用)、マカロニサラダ、スパゲッティサラダ(マヨネーズなど脂質の多い調味料には注意)
今回紹介するのは、メークインを使ったシンプルな「シャキシャキ食感のジャガイモサラダ」です。おかずにも糖質を加えてエネルギーを十分に補給しましょう。
ジャガイモにはコラーゲンの生成に欠かせないビタミンCも豊富に含まれています。選手だけではなく、親、祖父母世代が気になる塩分(ナトリウム)の排出を促すカリウム、便秘対策に役立つ食物繊維も多く含まれており、家族みんなで楽しめる食材のひとつです。