大学準硬式野球界において、最多となる12度の全国制覇を誇る中大準硬式野球部。部員33人という小所帯ながら、常に全国大会上位進出を果たす強豪だ。年3度の強化合宿で行う食事トレーニングは、8月の猛暑の中で行われる全国大会を想定し、熱中症対策を主眼に置く。春の合宿で見た選手たちの食事風景を紹介する。

リーグ優勝に沸くナイン。左腕大澤魁生(2年=浦和学院出)が8勝を挙げる大活躍をみせた
リーグ優勝に沸くナイン。左腕大澤魁生(2年=浦和学院出)が8勝を挙げる大活躍をみせた

8月の全国大会で勝つために

 中大準硬式野球部は、今春のリーグ戦で3季ぶり62度目の優勝を果たし、8月19日開幕の第70回全日本大学準硬式野球選手権大会の出場を決めた。2年ぶりのV奪回に燃えている。

 部員は全員とも大学の体育寮で生活を送っているが、強さの秘密は、強化合宿で行う「食トレ」にある。

選手の体調や目標体重に合わせ、池田監督がご飯をよそる。選手たちは元気に「山盛りでお願いします!」
選手の体調や目標体重に合わせ、池田監督がご飯をよそる。選手たちは元気に「山盛りでお願いします!」

 「全国大会が8月にあるので、真夏の暑さに負けない精神力と、スタミナを準備しなければいけません」と話す池田浩二監督(51)は、約30年の指導経験に基づいた考えで食事管理を行い、量を食べることの大切さを重視している。名付けて「熱中症に負けない! 夏を制する食トレ」だ。

 さらに、こだわっているのは「水分を摂りすぎないこと」。池田監督は「食事中に水やお茶を飲みすぎるとおなかが膨れてご飯が入らないだけでなく、余分な水分が体にたまって、熱中症になりやすい体質になってしまうことがあるからです」と力を込めた。

食事中に水分を摂りすぎない

 ここ数年、夏場は異常な暑さに見舞われており、スポーツ現場での熱中症対策も強く叫ばれている。とはいえ、その暑い8月に全国大会は行われる。池田監督は「暑さとの戦いになることは避けられない。その中で、どうしたら熱中症を防げるか?」と自身で勉強を重ねてきた。

「食事をする姿勢にも心が表れる」。支えてくれる両親や関係者への感謝の気持ちを、選手とともに話し合う池田監督
「食事をする姿勢にも心が表れる」。支えてくれる両親や関係者への感謝の気持ちを、選手とともに話し合う池田監督

 トレーニング中、試合中の水分補給にもこだわりがある。「水分補給は大切ですが、水をたくさん飲みすぎると大量の汗が出る。そのとき、体内の塩分も失われ、体の塩分濃度が下がってしまうことがある。体内の自動調整がうまくいかず、脱水症状を引き起こしてしまうケースもあるのです」と説明する。

 汗の成分は99%が水だが、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルも含まれており、大量の汗をかくと、それらも一緒に流れ出てしまう。運動中の水分補給は、一度に大量に飲むのではなく、「こまめにちょこちょこ摂る」のがポイントとされている。

 以前は、体内のミネラルが足りなくなって試合中に足がつったり、暑さで意識がもうろうとしたりする選手が何人も出た。そこでたどり着いたのが、2つの答えだ。「夏場に食欲が減らないよう、日頃からご飯をしっかり食べる習慣を身に付けること」「食事では水を控えめにし、必要以上に水分を摂るクセをなくすこと」だ。

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