昨年から海外に帯同、身の回りの世話

「よし! ついていこう!」

ちょうど1年前、康恵さんはそう思い立った。東京五輪出場をかけた重要な国際大会が続く2018年。早田とともに現地入りし、練習着の手洗いや、チームでは補えない細かい食事のサポートをすることを決意した。

海外で使用できる小型炊飯器や、保存可能でおいしく食べられる日本食をインターネットで調べて情報収集。スポンサーでもある地元福岡の明太子メーカーが考案した魚のパウチ料理なども取り寄せて、世界で勝つための補食グッズを持ち込んだ。名付けて「世界を制するための“ひな強化食”」。荷物の重量制限があるため、「軽量」であることもこだわっている。

世界選手権では早田とともにブダペスト入りしている康恵さん。「今回は大きい大会なので環境面は心配していませんが、何があるかわからないので…」と職場を休んで帯同している
世界選手権では早田とともにブダペスト入りしている康恵さん。「今回は大きい大会なので環境面は心配していませんが、何があるかわからないので…」と職場を休んで帯同している

康恵さんが選ぶ優れもの遠征グッズ

(1)国内外用炊飯器
 「日本からお米を持って行って、ご飯を炊いておにぎりを作っています。ご飯が3合炊けるほか、うどんも作れるんです。1.3キロと軽量なのも助かっています」

海外でも使える炊飯器。3合の米を炊けるほか、うどんを作れるのも便利
海外でも使える炊飯器。3合の米を炊けるほか、うどんを作れるのも便利

(2)備蓄用非常食(アルファ化米)
 「お湯を入れると温かいご飯になる非常食品です。とにかく軽いので、大量に買って持っていきます。味のついたヒジキご飯が特においしいみたいです」

震災時に注目された「アルファ化米」。非常食用として作られた商品だが、軽さと手軽さで海外遠征の多いアスリートたちの間で静かなブームになっているそうだ
震災時に注目された「アルファ化米」。非常食用として作られた商品だが、軽さと手軽さで海外遠征の多いアスリートたちの間で静かなブームになっているそうだ

(3)携帯用みそ汁
 「日本の味が恋しくなるので、フリーズドライのおみそ汁も必需品。海外で食事がバイキングのときは、ごはん&みそ汁を必ず組み合わせるようにしています」

母子で体調管理、好結果に

国際大会では、自己管理の差が試合の明暗を分けると実感した康恵さん。「チームの食事ももちろん大事ですが、ひなに合うもの、いいコンディションを呼び込むものを本人と日々相談して研究しています」。母子で取り組んだ体調管理は好結果をもたらし、帰国後もいい循環を及ぼしたと続ける。

「昨年10月にTリーグが開幕しましたが、海外遠征を挟んでもコンディションが落ちることがなかったんです。今まではケガも多かったのですが、今回はそれがありませんでした。Tリーグは日本生命の一員として『みんなで勝ち取った初代優勝』と喜んでいました」。

早田家のリビングに飾られた数々のメダルやトロフィー
早田家のリビングに飾られた数々のメダルやトロフィー

小4で卓球を始め、中学時代はやせ形で筋力が足りず、スタミナ負けすることが多かった。高い技術力の反面体ができておらず、ケガも多かった。そんな早田を、寝る間も惜しんで支え続けてきた康恵さんに、その原動力を聞くと、きっぱりと言い切った。

「だってどんなときも諦めない。私が尊敬するくらいの頑張り屋なんですよ、ひなは」。

世界の頂点を目指す早田のすぐそばで、康恵さんも一緒に戦っている。【樫本ゆき】

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