2017年には春夏の県大会でベスト4に進出、部活の盛んな進学校として注目度も上がっている千葉県立検見川高の野球部。そんな野球部を支えているのが、女子マネジャーが炊く寮めしに代わるご飯。愛情たっぷりの補食が、選手たちの心と体を強く、たくましく、そして優しく育てています。
最も負担かからない食トレ
「うちは全員が戦力。中でも女子マネジャー(以下女子マネ)が1番の戦力なんです」と酒井光雄監督(35)が話す。その目線の先には、大容量の炊飯器3つから、部員1人1人の食品保存容器に1合のご飯をよそう女子マネの姿があった。
酒井監督は16年に就任して早速、体を大きくするために補食を始めた。大学で学んだ栄養学や、独学で得たコーチングの中から「チームに最も負担がかからない食トレ」を取り入れた。「うちは寮がありません。毎日のお昼は保護者さんたちが用意してくださるお弁当です。補食にまで負担はかけられない。最小限にするための方法がご飯でした」。練習の合間に1人1合のご飯。公立だけに、部費にも限度がある。おかずは各自、ふりかけ、缶詰、ラー油、塩と手軽に入るものを用意。ご飯も、約2週間に1度、各自10キロの米を持ち寄り、補食にあてている。
「ホカホカのご飯を食べさせてあげたい」と、毎日の練習メニューには補食の時間も記され、女子マネはそれに合わせてご飯を炊く。補食の時間は、約4~5時間の練習時間のちょうど真ん中。「補食後も練習を2~3時間やるので、おなかをすかせて家に帰って、夕食もしっかり食べられる。夕食を2回、食べるための補食だと考えています」。
朝、昼、晩は親の愛情が詰まったご飯を、補食は女子マネが一生懸命炊いたご飯を食べる。「買ってくるものではなくて、人の愛情を選手全員で一緒に食べる。ただ体を大きくするだけでなく、感謝の気持ちを理解することも、補食の目的の1つです」と、酒井監督は話す。
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