マネジャー含め全員が戦力
現在、女子マネは7人。仕事は、補食作りだけでなく、練習の準備、ノックの手伝い。ZOZOマリンスタジアムに近いこともあり、公式戦となるとアナウンスや公式記録など、千葉県高校野球連盟の補助にも回り、県内の野球部からは一目置かれる存在だ。
年に2回の1泊2日での合宿では、女子マネが選手の朝食、夕食を調理し用意。今春の合宿では、夕食はカレー、朝食にはハヤシライスを調理した。池田瞳さん(3年)は「お母さんから聞いたレシピと、スマホを使って(笑い)。女子マネ全員でたくさんの野菜を切って炒めて煮込んで。最初は手際よくできなくて大変でした」と笑顔で話す。
朝5時から起きて選手たちのために調理する女子マネの姿を見て、部員たちは自然と料理をよそったり、配膳、後片付けもするようになった。酒井監督は「女子マネが頑張っている姿を見て、選手たちも感謝して手伝うことを学んでいるのです」と、日々の成長に目を細める。食事を通した部員同士の心の通ったやりとりが、この先の人生、必ず役に立つはずだ。
食事通し心の支え
酒井監督が目指す野球は「全員が戦力」。春、夏とメンバーが変わり、試合では登録20人のほぼ全員が試合に出るのが検見川野球だ。場面、場面で活躍できる生徒を選び、全員の長所を機能させ、力を合わせて戦う。強豪校がひしめく千葉県内の私学に、進学校の県立高校が勝負するための戦術。そして、選手を支える女子マネたち。池田さんも「1勝でも多く勝てるように、私たちも部員の支えになれるように頑張ります」と、夏へ向けて気合十分。彼女たちの愛情たっぷりの補食が、選手たちの心と体を強く、たくましく、そして優しく育てている。【保坂淑子】
■相手監督らにもごちそう
検見川の女子マネの料理の腕前は、大人もうならせる。土日、学校で他校を招いて練習試合が行われる時には、相手チームの監督、スタッフ、審判の昼食も料理する。
「買ってきたお弁当を用意するよりも、まとめてマネジャーに作ってもらうと安くあがる。その分、選手の用具代などに回せます。それに温かく心がこもったものをお出しできますから」と酒井監督。夏はそばとおにぎり2個。冬は、豚キムチ丼と春雨スープなど。グラウンドにはキッチンがないため、IHコンロだけで簡単に作れるメニューを工夫。試合の流れを見ながら、手際よく調理している。
酒井監督の狙いはもう1つ。「女子マネが活躍する場をもっと増やしたかったから」。料理を提供する女子マネは、しっかりとあいさつをし、笑顔で相手となにげない会話も生まれているようだった。池田さんは「大人と接することが多く緊張しますが、社会に出ていく上では重要なことを教わっている。『おいしかったよ』と言われるとうれしいんですよ」と笑顔で話す。
酒井監督も、そんな女子マネの頑張りに応え、遠征先では一緒に食事に出かけたり、毎日の補食の後は、冬は焼き芋やジャガイモを焼き、夏場はいただきもののお菓子を振る舞い、日ごろからコミュニケーションを図る。
これまで「選手の陰で支える」という印象が強かった女子マネ。しかし、検見川はチームの貴重な戦力として活躍する女子マネの姿があった。
◆千葉県立検見川高校 1974年(昭49)4月開校。校訓は、真実追求、自主創造、連帯協力。所在地は千葉市美浜区真砂4の17の1。佐藤道広校長。野球部は75年に創部され、現在の酒井光雄監督(市船橋―日体大)は16年就任。翌17年には、春夏の県大会で4強に。
(2019年5月27日付日刊スポーツ紙面掲載)