千葉県立銚子商野球部は、1974年(昭49)夏には全国制覇を果たしましたが、2005年(平17)夏以来甲子園から遠ざかっています。14年ぶりの聖地を目指すナインを支えているのはお母さん方と女子マネジャーが作る食事。体と心を成長させた選手たちが、伝統校復活の夏に挑みます。
食事の栄養価を高める工夫
「もう少しでご飯だ!」泥まみれになったユニホームの選手が叫びながらバットを振った。7月10日の夏の千葉県大会開幕まで1カ月を切った6月下旬。銚子商は、毎年恒例となっている合宿で汗を流していた。寮がないため、毎週末の金曜日から3日間、学内の施設に泊まり込み、朝4時から夜9時近くまで、徹底的に鍛え上げる。
そんな選手たちを支えるのは、保護者、女子マネジャー、そしてたくさんのOBとファンだ。沢田洋一監督(38)は「例年、状況に応じて変えているのですが、今年は3年生のお母さんたちと女子マネジャーに金曜日の夕食、土日の朝、昼、晩と選手の食事を作ってもらっています」と話す。グラウンド横にある校舎では、3年生のお母さん4人と女子マネジャー5人が、選手65人分の食事作りに忙しく走り回っていた。時折、グラウンドに漂うおいしい匂いが、練習中の選手たちの食欲をかきたてる。
調理台の上には、銚子産のキャベツ、サバ。お米も千葉産、と地元の食材がズラリと並ぶ。毎年恒例の合宿ともなれば、OB、ファンからの差し入れが次々と届けられるのも古豪ならでは。それらの食材をもとに、お母さんたちがメニューを作成する。「合宿中は練習量が多く体重が減る傾向なので、少しでも食欲が出るようなメニューで、いかに食べやすくするかを考えています」と那須裕美さん(44)。
この日はより多くタンパク質を摂取できるよう、差し入れのキャベツを使ったロールキャベツの具材には、おからを入れ栄養価を高める工夫をしていた。
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