将棋やけん玉で勝負勘養う

和田監督は「寮の食堂はみんなの憩いの場にしたい」と話す。監督就任後、数日間、寮に宿泊し、選手と寝起きをともにしたところ、楽しく生活している選手の一面が見られたと言う。「グラウンドで厳しくしている分、寮は自由にさせてやりたい。その一番が食堂だと思うのです」。

9月には、将棋とけん玉2つを部で購入し、食堂に置いた。「携帯文化でありながらスマホを禁止にして、寮ではスタッフが預かり、週1の休みの日にしか返しません。きっとストレスがたまるでしょう。何か遊ぶものを、と思ったのです」。

将棋やけん玉を楽しむ選手たち。左から時計まわりに竹内、杉村、人見、清田
将棋やけん玉を楽しむ選手たち。左から時計まわりに竹内、杉村、人見、清田

将棋は、相手との駆け引きや頭を使う。けん玉は集中力やヒザ、体幹を使うためにいい感覚をつかめるといわれている。娯楽感覚で、勝負勘を養う。エースの竹内将悟投手(2年)は「最近、やり方を覚えてから、相手の考え方を予測するようになりました。面白いです」と話し、食事前、後の勝負でチーム一の勝率を誇っている。

「食事は楽しく」笑顔あふれる食堂

「食事は楽しく」という考えは、和田監督ならではの経験に基づいている。ロッテを引退後、同球団のコーチなどを務めたのち、1から飲食業を学び、07年渋谷に和食ダイニング「美醤(びしょう)」を開業。現在も経営に携わっている。日ごろ、お店で食事を楽しむお客さんたちの表情を見ながら、次のメニューを考えたり、店の方針を考える。その根底は「食事は楽しく」だ。「静かな食卓ではコミュニケーションもとれない。食堂は寮生活でも一番、楽しいところでもあるはずですから」。楽しく食べれば、食事の美味しさも倍増し食も進む。拓大紅陵の食堂は、いつも笑顔であふれている。【保坂淑子】

◆和田孝志(わだ・たかし) 1970年(昭45)10月7日、埼玉県生まれ。拓大紅陵時代は3年夏の甲子園に一塁手で出場し、7打数3安打。東洋大2年春の亜大戦でノーヒットノーラン達成。92年ドラフト3位でロッテ入団。02年引退。通算72試合で2勝3敗、防御率3.67。09年にはロッテの2軍投手コーチ補佐を務めた。右投げ右打ち。

◆拓大紅陵 1978年(昭53)創立の私立高校。「人生開拓」を教育理念としている。野球部も78年に創部。甲子園出場は春4回、夏5回。92年(平4)夏は準優勝。主なOBに加藤貴之(日本ハム)、飯田哲也(元ヤクルトほか)、小川博文(元オリックスほか)ら。千葉県木更津市桜井1403。

(2019年10月28日付日刊スポーツ紙面掲載)