多く食べられる環境作り
なんば農園からは、補食以外にも「山ぶどうジュース」、秋は山形名物のいも煮、夏の大会中にはキュウリの浅漬けやたくさんのフルーツが届けられる。吉田陸人外野手(2年)は「高校に入ってから本塁打を打てるようになった。難波さんの補食とお弁当のおかげです」と大好評だ。
OBのトレーナー、三浦憲明さん(32)も野球部をサポートする。月1回、インボディ(体成分分析装置)で選手の体を計測。数値を基に、選手にアドバイス。三浦さんは「“食べろ”と強制することはありません。数値を見せて、どうする? と問う。あとは選手次第です」と話す。
その中で最も注目するのが、BMI値だ。甲子園に出場したチームの平均が24とのデータがあり、鶴岡東もその数値を目標にしている。「BMI値は身長と体重の比率での体格指数。今から身長を伸ばすことは難しい。体重を増やすしかないわけです。ただ体重を増やせばいいわけではなく、そこに体脂肪率も示して体作りをさせています」(三浦さん)。
この秋、6割の打率を残した野川大輔外野手(2年)は「過去、体の大きい先輩が活躍している。それが励みになってもっと食べて体を大きくしようと思うんです」と鶴岡東が築いてきた歴史が、食に対する自主性を促す。痩せている選手は体の大きい選手の隣に座り一緒に食事する。環境からも多く食べられる工夫をしている。同外野手は「この冬で3~4キロ増やしてもっとパワーアップしたいです」と意欲を見せる。
「何が正解かは分かりません。これからも試行錯誤しながら、生徒のためにいいと思うことを続けていきたいですね」と佐藤監督。OBの強力なバックアップと地元のおいしい食材で、鶴岡東はたくましく成長している。
補食の一環で「朝食2回」
鶴岡東は、補食の一環で「朝食2回」を実施している。午前6時30分、下宿生は全員ラーメンどんぶりに大盛り1杯のご飯を食べる。7時から朝練習で1時間ほど体を動かした後、今度は自宅から通う選手を含め約15人が2度目の朝食。朝食と同じどんぶりご飯に、野菜炒めやミートボール、シラス、オクラなどがのった特製どんぶりだ。
佐藤監督は「朝練習で体を動かした後なら、少しは食べられるだろう、と。時間の使い方を工夫した中でこうした取り組みになりました」。授業の合間にもパンやおにぎりなど、時間があれば食べ物を口にする。1年で8キロ増えた選手もいるという。
本編に登場した難波さん、的場さん、三浦さんについて「私が鶴岡東の監督に就任し、勝てなかった頃のOBたちが助けてくれているんです」と佐藤監督。今夏の甲子園は3回戦進出。秋は東北大会準優勝と、鶴岡東はOBも一体となり前進している。【保坂淑子】
◆鶴岡東 1968年(昭43)創立の私立校。校訓は、秩序・忍耐・努力。野球部も68年創部で、甲子園は春1度、夏6度、今夏は高松商、習志野を破り3回戦進出。主なOBはソフトバンク吉住晴斗。学校所在地は山形県鶴岡市切添町22の30。斎藤哲校長。
(2019年11月25日付、日刊スポーツ紙面掲載)