保護者が協力し、鍋や汁物を提供
また、2年前から冬休みや春休みの1~2週間、午前・午後に練習がある日は、お昼時に保護者の有志が集まり、学校の食堂の調理場を借りて「炊き出し」が行われる。多摩川沿いにあるグラウンドは風が強く寒い。各自持参するお弁当も冷えてしまうので「体を温めて欲しい」として保護者からの申し出で、鍋や汁物の提供が始まった。
この日のメニューは「白菜つみれ鍋」。白菜は6玉使い、鍋は10個、約70人分を作った。油で揚げた鶏のつみれのコクがあり、あっさりしていながら満足感が高い。
No.8牧野奏選手(3年)の母美保さんが「炊き出し係」として取りまとめ、事前に食材を調達、調理指示を出していた。高校ラガーマンの食事を支える母親たちが集まると「初対面同士でも意志が伝わり、手際よく進められます。保護者も学年を超えて仲がいいんですよ」と牧野さんは言いながら、選手たちの食べっぷりに目を細めた。
「おかげで体が温まりました。ごちそうさまでした!」と食べ終わった選手たちは、お礼を言いながら午後の練習の準備に向かった。鍋を囲んで談笑しながら食べる昼食は、体だけでなく心も温まり、チームの結束にもつながっているようだった。
炊き出しのメニューはこのほか、ほうとう鍋、豆乳鍋、豚汁、カレー、シチューなど。早朝からのお弁当や補食作りに加え、昼食のお手伝いをする牧野さんは「忙しいし、大変だけど、充実しているのよね」と笑顔を見せた。
台風でグラウンド水没、一時は絶望も
都大会がすでに始まっていた10月13日、台風19号による洪水でグラウンドが完全に水没した。水が引くまで10日以上かかり、一時は絶望のふちに立たされた。「ショックでしたね。我々がどうにかできる状態でもなかった」(戸田コーチ)。ポールも根こそぎ流され、1つ300キロ以上もあるスクラムマシーンは3キロ先まで流されていた。
重機を入れての整地・清掃を経て、グラウンドが使えるようになったのは今月上旬から。その間、近隣の慶応高や慶大、東京農大らの協力を得て練習することができた。「本当に多くの支援を受けた。大学生とも練習ができたことも大きかった」と戸田コーチ。「困っている時に助けてくれて、いい練習をさせてもらった」(石井)と選手にも感謝の気持ちが芽生えたことで、精神的にも強くなった。
学校では「スポーツクラス」で同じクラスのメンバーが多く、仲が良い。ラグビーワールドカップで活躍した日本代表にも刺激を受けた東京フィフティーンも「ONE TEAM」で戦う意気込みだ。初戦は30日、黒沢尻工(岩手)と米子工(鳥取)の勝者。まずは花園での年越しを目指し、コンディションを整えていく。
【アスレシピ編集部・飯田みさ代】