宿の食事を「勝つための献立」に

また、宿泊先と交渉した結果、大会期間中、斉藤さんが作成した試合に勝つための献立を朝と夕、提供してもらえることになった。半田監督は「これまで『野菜を多めに』などとホテルに伝えたことはあったが、丸々こちらの要望を聞いてもらえるなんて初めて。本当に心強い」と声を弾ませた。

連戦を勝ち抜くための献立は、試合前は「持久力を高める」、試合後は「疲労回復」がテーマ。試合前日から糖質の割合を増やすため、朝食はおにぎり2個にミニうどんといったように炭水化物量を増やし、ゴボウなどの食物繊維が多いものや牛乳や乳製品を控えている。試合後は味付きご飯や、餃子などの味のしっかりついたおかずで白米が進むように工夫しているという。

補食に小分けチョコもちょこっと

食事の情報交換は、常に長谷川歩実コーチと行い、チーム方針や選手の好み、栄養的内容をすり合わせた。会場に持ち込む補食は、タンパク質が摂れる常温保存可能なねり製品、キッズサイズのスティックパンを用意。また、リラックス効果を狙って小分けのチョコも準備した。「試合前や後に、チョコで緊張を和らげて欲しいし、小分けになっているものなら食べ過ぎない」。斉藤さんは現地入りしないが、トレーナーらと随時情報交換しながら、バックアップしていく。

気持ちでも盛り上げるDF山田主将
気持ちでも盛り上げるDF山田主将

代表経験豊富で、指導歴16年目の半田監督は言う。「私も、メディカルや食事についてある程度の知識は持っている。ただ、私たちの時代とは情報が随分変わってきているので、最新の知識を持つ専門家に任せている」。

例えば、試合前のエネルギー補給として消化の良いうどんを食べるにしても、半田監督の頃は「素うどん」だったが、今は肉やホウレン草やニンジンをプラスした方がいいというように。協力スタッフが増えたことで役割分担でき、監督は指導に専念、選手も色々な人に相談できるようになったので、まさに一石二鳥だという。

勝ちたい気持ちが仇?!敵は内にあり

中高6年間の一貫教育をうたう常葉大橘は、入部時にセレクションがある。サッカーどころ静岡県で、小学生時代から地区選抜メンバーに選ばれるような選手が集まるが、「中高時代は通過点」とし、個性を生かし、自主性を重んじながら技術とフィジカルを養うのが特徴だ。

しかし、全国で勝ちたい気持ちが強いからか、選手たちはここ一番で緊張し、通常では起こらないようなミスが出るなど、実力を発揮できないまま敗れることが多かった。半田監督は「力を出し切れなくて負けるのは、監督として納得がいかない。だから、相手がどこだろうが関係ない。敵は自分たち」と語気を強める。

全国大会で躍進を誓う常葉大橘の選手たち
全国大会で躍進を誓う常葉大橘の選手たち

選手1人1人を見ながら半田監督は、モチベーションアップのために声かけにも気を使ってきた。褒めてやる気を出させたり、カツを入れて気持ちを振るいたたせたり…。大会間近となった最近は「とにかく試合では、普段通りにやることを意識しよう。いつも通りにやれば結果は伴ってくる」と言い続け、練習時から本番を意識させている。

夏のインターハイも県3位で出場できず、悔しい思いをした。山田主将は「緊張すると視野が狭くなってしまう。みんなが落ち着いてプレーできるよう、後ろからやる気が出るような声をかけたい」と平常心がカギと言う。「1つ勝てば、勢いに乗るタイプでもある」と半田監督。勝ちたい気持ちを1つにして、常葉大橘の旋風を巻き起こしたい。

【アスレシピ編集部・飯田みさ代】