血液検査で判明、タンパク足りない

2年前には、勧められて受けた血液検査で「タンパク」が足りないことも分かった。管理栄養士からの助言も受けてその後、昼食と夕食には必ず、肉と魚の主菜2品を並べて欲しいと梅子さんに頼んだ。1食あたり肉200g、魚100g。補食やサプリメントも含めて十分なタンパク質量をとるよう意識した。それに汁物、乳製品、サラダなどの副菜、ご飯が基本だ。

「貧血気味だったのも、不足していたのは鉄ではなくタンパクだったんです」。タンパク源を増やしたことで、疲れやすかった体調も回復した。サプリメントの使い方も学び、食べる順番も意識。脂にもこだわり、すぐにエネルギーに変わるMTCオイルを食後に大さじ3杯飲むようにもしている。

昨年のインカレ200メートル自由形で優勝し、表彰式で明大の先輩、松元克央から祝福される吉田(明大スポーツ提供)
昨年のインカレ200メートル自由形で優勝し、表彰式で明大の先輩、松元克央から祝福される吉田(明大スポーツ提供)

さらに、意識の高い社会人選手と一緒に練習や合宿を行うようになったことで刺激を受けた。「彼らはコンビニに行くと、商品の成分表示を見て、数値を計算しながら購入していた」。そのストイックさに、元来の探求心が頭をもたげた。元々、納得できないと前に進めないタイプ。先輩スイマーを質問攻めにして、知識を自分のものにしていった。

良いと言われたものは何でも試し、グルテンフリーにも挑戦した。「自分には合わなかった」として約2カ月で止めたが、この間、梅子さんは調味料の原材料まで調べ、ぽん酢や焼き肉のタレまでも手作りした。「味が今ひとつで、不評でしたけどね」と笑って振り返った。

「スイマーには水かきができる」と言うが、吉田の手にも水かきがあった…
「スイマーには水かきができる」と言うが、吉田の手にも水かきがあった…

吉田は年3回ほど血液検査をしながら、体の中をチェックする。「『今日はビタミンB1が足りないな』とか『ビタミンEが足りてねえ』とか、泳ぎや体調から分かると言う先輩もいますが、自分はまだそこまで行っていません」と笑いながら謙遜するが、勝負のレースに向けて万全なコンディション作りに注力している。

応援してくれる人たちのために

練習の成果が発揮できず、レースで満足いくタイムが出なかったり、期待に応えられなかったりして悩んだ時もある。大学卒業とともに競泳を辞めようともしたが、4月には情報システム関連の三谷産業にアスリート入社することが内定。就職活動をして、多くの人と出会ったことも人としてプラスになった。

支えてくれた両親に健闘を誓う吉田
支えてくれた両親に健闘を誓う吉田

「考えてみると、アスリートは9:1で圧倒的につらいことが多い。そのたった1割の喜び、報われた時、出来た時、そのたまにある喜びが大きいからこそ、続けられている。自分1人だったらとっくに辞めていた。応援してくれる人たち、チームメート、コーチ、家族、今度は会社の人たちのためにも頑張りたい」。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大会は無観客となり、会期も短縮されたが、目標に向かって突き進むだけ。男子200メートル自由形決勝は4月3日。精神的にも成熟し、大人のアスリートとなった吉田の泳ぎに期待したい。

【アスレシピ編集部・飯田みさ代】

男子800メートルリレー代表への道

日本選手権の200メートル自由形決勝で次の要件を満たすことが条件。代表選手は、日本選手権終了後に発表される。
(1)リレー派遣標準記録(7分08秒31)を上位4人で突破した場合、その4人が代表となる。
(2)(1)がクリアできなかった場合は、リレー派遣標準記録の1人平均(1分47秒08)を突破した選手が代表となる。
(3)(2)で選考されないリレー選手は、個人種目で選考された選手及び、200メートル自由形決勝の上位4位に入った選手の中から選考委員会が選考する。

◆吉田冬優(よしだ・ふゆ) 1997年(平9)11月23日生まれ。千葉県出身。兄2人の影響で2歳からスイミングを始める。佃中-淑徳巣鴨高-明大。全国中学大会100メートル自由形で優勝。インターハイで100メートル、200メートル自由形ともに優勝。インカレでは17年に400メートル、19年に200メートル自由形で優勝。16年アジア選手権800メートルリレー優勝。18年世界選手権代表選手選考会で400メートル自由形を制し、世界短水路選手権へ出場。父耕司さん(62)、母梅子さん(63)、兄2人。