コンセプトはアスリートに特化したカレー
導いた結論は「アスリート向けに特化すること」だった。脂質を抑えるために具材の肉は鶏むね肉を採用。かみごたえをあえて作り、アスリートにかむ力をつけさせる。また、不足しがちなタンパク質を補うためにコラーゲンペプチドをプラス。一般的なレトルトカレーと比べて2倍以上のタンパク質を含む商品に仕上げた。
2020年2月3日、最終テストでは隠し味のイチジクの量などを調整。甘みのバランスを考え「子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまでが楽しめる味になった」(會田先生)と幅広く愛される中辛味での制作、販売が決まった。
令和世代が持っていたSNSでの拡散力
味はマイルドでも販売戦略はとがらせた。パッケージは学校のカラーでもある青に決定。飲食界では「食欲減退色」として避けられるが、他にはない目立つ色で攻めた。また生徒自身の拡散力が効果を発揮した。「本当に商品になるのかなぁと最初は半信半疑だった生徒が、届いたパッケージを見た瞬間に目の色が変わった。みんな自分たちのSNSで宣伝をしているみたいです」(會田先生)と開発に参加した生徒が自発的にインスタグラムなどSNSに投稿。宣伝広告費が無い中で、若者ならではのツールで認知を広げていった。
地元、生徒の熱意で完成したレトルトカレー。加須市の経済部産業振興課の松本和昭さんは「単なるご当地カレーでなく、アスリート向けであると特色を出すことができた。地元の高校生と開発できたことはうれしいし、これをきっかけに加須市の名前を知ってもらいたい」と期待を寄せる。
ヒットの兆しを見せる中、會田先生は「アスメシカレーをきっかけに食べることの重要性を考えてほしい。これだけ食べていればいいという食事はない。部活動を行う生徒だけでなく、全員が食に対しての関心を持ってもらえるように」と引き締める。9月1日から販売再開され、今後はちょい足しレシピなどを掲載したアスメシカレー特設サイトの認知、発売元や協議会と連携して県内の販路拡大を目指していく。
甲子園優勝校が送り出したアスリート向けのレトルトカレー。地元愛とともに食の重要性を食卓に届けていく。
◆加須市 埼玉県北東部に位置する市。人口約11万人。県内有数の農産地で米、そば、冬春なす、冬春トマトの作付面積・収穫量は1位(平成29年、30年度調査)。イチジクは作付面積が県内トップ。名物はこいのぼり、加須うどん。
◆花咲徳栄 1982年(昭57)創立の私立校。普通科のほか食育実践科がある。野球部の甲子園出場は春5度、夏は7度。17年夏に全国制覇。主なOBはオリックス若月健矢、プロボクシングの元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志氏ら。所在地は加須市花崎江橋519。