お菓子を食べなくなった

補食を提供しているのは、横浜高野球部の寮母を務めた管理栄養士の渡辺元美さんだ。必要な栄養素だけでなく、アスリートの日常生活、嗜好(しこう)を知り尽くしている渡辺さんから「お米」の持つパワーを聞き、選手、保護者に理解させたうえで、週4回(火~金曜)、1日2個のおむすび補食を取り入れた。

おむすびの種類は20以上。選手は酢飯やおこわを使った「企画おむすび」を毎日楽しみにしている
おむすびの種類は20以上。選手は酢飯やおこわを使った「企画おむすび」を毎日楽しみにしている

渡辺さんが考案したおむすびは「いろどり」「栄養」「食べやすさ」にこだわり、味の種類は20以上。ショウガ焼き、鶏おこわ、高菜と豚肉チャーハンなど、見た目も楽しいおかず入りのおむすびで女子にも大好評だ。先日は選手から「酢飯のおむすびが食べたい」のリクエストで、ちらしずしおむすびを提供。

補食を始めてから意欲的に自炊もするようになった選手たち。中道主将(右端)の得意料理はみそ汁だとか
補食を始めてから意欲的に自炊もするようになった選手たち。中道主将(右端)の得意料理はみそ汁だとか

主将の中道はな選手(3年・DF)は「補食が始まってから、みんなお菓子を買って食べることもなくなりました。何を食べたらいいかわからず、練習前に菓子パンとかを食べていたけど、補食=栄養ととらえて体づくりへの意識も変わりました。体重も全員が規則的に量るようになりましたよ」。木村監督は「成長期の女子たちに、ストイックすぎる食トレはしたくなかった。お菓子をお米に変えるなど、小さい意識が大切なんです」と期待する。

食トレを開始すると、選手の食意識が変わり、練習への積極性もアップした
食トレを開始すると、選手の食意識が変わり、練習への積極性もアップした

感染症拡大によるインターハイ中止や休校を経験したが、来年1月の選手権に向け最後までやり切ることを決めた選手たち。中道主将は「全員が最後まで笑顔でがんばろうと言い合っています」。ハッピーなオーラが漂う湘南学院の補食タイム。明るさや元気を失わず、丈夫でタフな体を手に入れ、全国大会出場に「結び」つける!【樫本ゆき】

選手たちは皆おむすびが大好き。スパイスの効いた黄色いカレーピラフおむすびは見た目も楽しい
選手たちは皆おむすびが大好き。スパイスの効いた黄色いカレーピラフおむすびは見た目も楽しい

甲子園常連校の元寮母

補食を担当する管理栄養士の渡辺元美さん(株式会社YTライズ代表)は、甲子園常連校の横浜高野球部の寮母を1997年から務めた食育のベテラン。2018年に寮母を引退したあと、大学アスリート寮の食事サポートや、関東圏内で栄養講習、運動部への補食デリバリーサービスを行っている。父が渡辺元智さん(元横浜高監督)、息子が佳明選手(楽天)という家庭の中でプロテインやサプリに頼りすぎない家庭でもできる食育が支持を得ている。

「女子は食育にも積極的なんです」。寮母時代から選手たちの食の悩みに優しく寄り添ってきた渡辺元美さん(左)
「女子は食育にも積極的なんです」。寮母時代から選手たちの食の悩みに優しく寄り添ってきた渡辺元美さん(左)

「成長期の女性なので体脂肪と体重が減りすぎないようバランスを注視しています。男子よりも反応が大きく、好みの要望も伝えてくれるので、かわいくてたまらないですね」と意欲的だ。「お結び」事業を開業し、適度なタンパク質と可能な限り脂質を減らした栄養価の高いオリジナルおむすびを選手たちに届けている。

◆湘南学院 女学校として1932年(昭7)に創立した私学。00年の男女共学を機に現校名に。校訓は「進まざるものは退く」。女子サッカー部は87年創部。卒業生に元日本代表の近賀ゆかり、矢野喬子ほか。学校所在地は神奈川県横須賀市佐原2の2の20。

(2020年9月28日付、日刊スポーツ紙面掲載)