変化のきっかけとなった「塩麹」

スポーツ栄養の観点で、徳本監督は以前から「塩麹」を愛用していた。

ただ、学生に薦めだしたのは2018年ごろだった。液体塩こうじの研究を行っていた実業団時代の後輩から、腸内環境が良くなるという成果を耳にしたことだった。このエビデンスを受けて学生に薦めると同時に、ハナマルキとも連絡を取り始めた。ここから両者に接点が生まれた。

「ご提供いただくと共に、学生にはどういう栄養素を摂った方がいいのか、何を食べたら力がついて能力が上がるのか、勉強して知識を付けてほしいと思いました。そのきっかけとして、自炊する選手に塩麹を与えました」

きっかけを与えられて、自ら外国産の固い肉を買い、浸してやわらかくなることを実感した学生がいた。米に混ぜることで冷たくなってもおいしく食べられることを知り、練習後のおにぎりに使う選手もいた。

陸上長距離という種目は、ウェートコントロールが重要になる。今、クラウドを使って選手自身が作ったメニューや体調などを記録し、栄養士がアドバイスできるようにし始めた。監督就任から9年、塩麹という調味料がきっかけで、駅伝部を取り巻くさまざまな環境が変わっていった。

強豪校にないストーリーへの共感

駿河台大駅伝部の徳本監督(左)とハナマルキの平田取締役兼マーケティング部長
駿河台大駅伝部の徳本監督(左)とハナマルキの平田取締役兼マーケティング部長

箱根駅伝の予選会はまだ突破できていない。ただ、昨年は過去最高の総合12位にまで順位を上げた。10位まで1分58秒差に迫った。17日に迎える今年の予選会に向けて、監督は「今までは『昨年よりも前進しよう』だったが、今年は初めて選手の中で『箱根に行くんだ』という気持ちが生まれた。選手が選手に怒るシーンはこれまでなかった。熱を感じる」と手応えを明かした。

これが、駿河台大駅伝部の“ストーリー”だ。

話を戻すと、ハナマルキは決して強豪校ではない駿河台大駅伝部のこのストーリーに共感した。監督と管理栄養士が夫婦で互いの意見がうまく融合したメニューが開発できること、同社商品の「液体塩こうじ」を愛用していること、何より、駿河台大駅伝部が発展途上の挑戦者であること―。

「ハナマルキも今年、海外での可能性に備えてタイに液体塩こうじ専用の新工場を設立しました。液体塩こうじはまだまだ発展途上。チャレンジャー精神の志が共感するところがあり、この企画をお願いしました」と、同社の平田伸行取締役兼マーケティング部長は明かした。

まだ何かを成し遂げたわけではないチームがこれから、どう変わっていけるか。

「企業とタイアップしながら新しいモノを生み出し、ウインウインの関係を築くことで学生スポーツも盛り上がっていく。こういった関係をどんどん築いていきながらチームを強くしていきたい」(徳本監督)

ハナマルキと駿河台大駅伝部のコラボは、新しい成功事例の先駆けになる要素を秘めている。【アスレシピ編集部】