選手ファーストのメニュー、栄養面もぬかりなし
峯岸さんの作る食事で選手たちは体を強くし、最近では「菅生の選手は試合中でも足がつることがない」と評価をされている。メニューは同社の社長・小川浩一さん(53)が作成する。「お昼は栄養士が作っている学食のメニューで、朝と夜は、コーチやキャプテンの意見を取り入れて作成しています」。
栄養はもちろん、選手の食事が進むもの、好きなものが中心。昨年までは毎食、スマホなどで撮影した写真を栄養士に送り、健康管理のチェックも受け、選手ファーストのメニューであっても栄養面のぬかりはない。月に1度は寮監を務める宮原上総コーチ(31)を交えメニューについて話し合う。「寮の食事を始めた頃は、揚げ物の方が食事が進むと思っていたんです。でも、宮原コーチによると選手たちは練習後で、揚げ物だと食事が進まない、と聞きました。それなら肉料理を出すように切り替えました」と小川さん。
同じ素材でも、経験豊富な峯岸さんの腕にかかれば、味は変幻自在。今年はコロナ禍もありできないが、例年の冬は鍋料理を提供するなど、メニューのバリエーションは豊か。選手たちは、飽きることなくおいしく食事している。
一昨年までは練習の合間に補食もとっていたが、現在はそれをやめ、その分のご飯を夜食に切り替え体重アップに力を入れている。選手たちのこの冬の課題は各自3キロ増。千田外野手は「体重を増やしてもっと飛距離を伸ばしたい」と意気込む。昨秋の東京都大会優勝で今春のセンバツ出場は当確。その舞台で、目指すは全国制覇だ。
心のこもった料理に監督も感謝
野球好きが料理の最高のスパイスだ。選手たちにおいしい食事を提供している調理責任者・峯岸さんの息子さんは、10年東海大菅生の主将を務めた憲吾さん。当時から、日曜日は寮の食堂はお休みで、保護者が腕を振るっていた。
この年、峯岸さんは「息子のために」と早朝4時から寮につめかけ調理。低予算で絶品の食事を提供(現在はコロナ禍で保護者の調理は中止)。京王プラザホテル、東京全日空、ハイアットホテルなど、名だたるホテルで腕を振るい、横浜ベイシェラトンでは、横浜遠征中の阪神、中日の選手たち、またクラブワールドカップ出場のブラジルチームの食事も担当。その実績を評価した若林監督がスカウトした。峯岸さんは「試合が終わった後でも食べられる食事、味付けなど、これまでの経験が今に生きています」と話す。
選手たちのためには労を惜しまない。毎年、12月の合宿最終日には、料理とデザートをバイキング形式で出している。岩井大和内野手(2年)は「いつもより豪華な料理を用意してくれるので、乗り越えられます」と話し、選手たちの励みになっている。若林監督も「料理の腕はもちろん、峯岸さんには心がある」と感謝している。
「野球に携われるのは楽しい。選手たちにはもっと大きくなって欲しい。そのためにこれからもどんどんおいしい料理を提供します」と峯岸さん。日本一に向け、これからも最強のサポートをしていくつもりだ。【保坂淑子】
◆東海大菅生 1983年(昭58)に東京菅生高校として創立。89年(平元)現校名に。自立・自学・自生が教育方針。野球部は創立と同時に創部。甲子園は春3度、夏3度の出場。OBに高橋優貴(巨人)、勝俣翔貴(オリックス)ら。所在地は東京都あきる野市菅生1817。
(2021年1月25日付、日刊スポーツ紙面掲載)