米国の女子プロアメリカンフットボールリーグで20年間プレーし、2019年に米女子アメリカンフットボールの殿堂入りを果たして54歳で引退した鈴木弘子氏(56)が昨年12月、新型コロナウイルスに感染した。人一倍体力に自信があったという鈴木氏だが、今も後遺症に悩まされており、「この病気について皆さんに少しでもシェアできたら」とインタビューにこたえてくれた。誰もが感染する可能性があるコロナの症状や後遺症、知っておくべき備えや米国での現状などをお伝えする(コロナに関する内容は個人の体験に基づいてのものであり、情報は2021年1月末時点のものをまとめている)。
54歳まで現役、日本人初の米女子アメフト殿堂入り
コロナによるパンデミックが始まって以降、不要不急の外出を控え、マスク着用や手洗いなど感染予防も徹底してきた鈴木氏は12月中旬、フロリダ州で開催されたボディビル界で最も権威ある大会「ミスターオリンピア」に仕事で訪れた。ほとんどのプロスポーツ競技が選手に対して定期的にPCR検査を実施しているが、この大会は検査を義務付けていなかった。開催地のフロリダ州は感染予防より、経済活動を優先する政策をとっていることから、会場も“密”だったことが、結果的に感染につながった。
マスクせず密で声援「感染するだろうな」
当初、開催を予定していたネバダ州は350人以上の観客を収容することができないため、規制の緩いフロリダ州に変更された。立ち見まで出る満員で、約5000人がソーシャルディスタンスもない狭い会場に集まり、鈴木氏以外ほとんどマスクを着用せず、大声で選手に声援を送っていた。「多分、感染するだろうな」という鈴木氏の悪い予感が、見事に的中してしまった。
鈴木氏の自宅のあるラスベガスではホテルが閉鎖され、駐車場がドライブスルーによるPCR検査場になっている。こうした大型検査場があちこちにあり、ボランティアが検査などを行っており、予約をすれば誰でも無料で受けることができる。鈴木氏は帰宅後の翌日に検査を受けるつもりだったが、感染から5日程度経過しないと正確な結果は出ないと忠告され、様子を見ることにした。
発症後の症状、たどる経緯は個人差が大きい
自宅に戻った2日後、一緒にフロリダを訪れたパートナーで、ボディビル界の世界的レジェンドのミロシュ・シャルチェブ氏に微熱が出た。夜には39度になり、その後3日間は高熱が続き、寝ていても時折うなり声をあげるほど、苦しそうだった。その間、鈴木氏自身は「なんとなく風邪っぽい」と感じる程度で、コロナを疑う症状はなかった。
4日目に、シャルチェブ氏が少し回復して微熱になったことから、一緒にPCR検査を受けたところ、共に陽性だった。その後、シャルチェブ氏は順調に回復に向かったが、鈴木氏は検査直後から倦怠感と節々の痛みを感じるようになり、微熱が続いた。感染から8日目にはひどい倦怠感と全身の関節や筋肉の痛みで動けなくなり、「微熱なのに体が熱くて体感的には39度もあるような感覚」で、体中が痛くて眠れなかったという。
その後、陽性だと分かりながら大会に出場していた選手がいたことが判明。おそらくシャルチェブ氏がその人から感染し、鈴木氏は二次感染を受けたと思われる。
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