感染後は基本的に自宅療養、急変の恐怖も

感染者数が多いアメリカでは、PCR検査で陽性となっても、無症状や軽症ならそのまま自宅で自己隔離しながら療養することになる。陽性結果が出ると、市の保健当局から聞き取り調査の電話があり、10日間(アメリカで他人に感染させる可能性があるとされる期間)の外出禁止を言い渡され、監視するためのアプリもダウンロードしなければならない。医学的な質問には答えてもらえず、悪化した場合もどこの病院に行けばよいのかといった情報も教えてもらえない。もらっていた緊急連絡先に電話をした時はつながらず、「いざ悪化した時、どうして良いのか分からず、不安だった」と振り返る。

54歳まで現役でプレーした鈴木氏
54歳まで現役でプレーした鈴木氏

コロナには「ワンクール8日間」という周期があることが世界的に分かってきており、シャルチェブ氏のように最短8日間で回復する人もいるが、発症から8日後に悪化するケースもある。鈴木氏の場合は後者で、発症して8日後に一旦は症状が落ち着いたが、その翌日には高熱と胃の激痛に襲われた。回復するまでさらにそこから8日間、合計24日もかかった。

特に、39度の高熱が出てからの3日間が苦しかった。体温調整ができなくなり、布団をかけて寝ると暑くて夜中に目が覚め、外に出て体を冷ますと今度は体温が下がりすぎて電気毛布にくるまっても悪寒に襲われる、の繰り返し。息苦しさや咳はなかったが、これまで経験したことのない激しい胃痛に襲われた。食欲はもちろんなく、水を飲むだけで激痛が走るので、水分補給さえ苦痛だった。

容態が急変する原因のほとんどが肺にあると、コロナ病棟で働く知人医師からの忠告で、陽性判明後すぐに、肺が機能しているかを確認するためにパルスオキシメーター(血中酸素濃度測定器)を購入した。血中酸素飽和度が95%以上だと呼吸不全の心配は少なく、90%を切ったらすぐに病院に行くようアドバイスされていたので、1日何度も測定して不安を解消できたことは精神的な助けとなったが、高熱が出て3日目、ついに血中酸素飽和度が危険レベルとされる87%になった。

緊急連絡先にも電話はつながらず、いよいよ急変への恐怖が頭をよぎった。胃痛からほとんど何も口にできない状態だったため、シャルチェブ氏のアドバイスで「とにかく水分補給をしようと、何とか口にできるスイカを食べたところ、数値が戻って体調も少しずつ落ち着いてきた」。熱による大量の発汗や下痢によって脱水症状に陥っていたことが原因だったようで、その翌日からは見違えるように体調が良くなった。

後遺症で極度の疲労感「まだ体の中にウイルスが…」

コロナ感染後、後遺症に悩まされながらもインタビューに答えてくれた鈴木氏
コロナ感染後、後遺症に悩まされながらもインタビューに答えてくれた鈴木氏

50歳を過ぎても体力の衰えを感じず、54歳まで現役を続けてきた鈴木氏は「体力には人一倍自信があった」と話すが、今も後遺症で体を動かすと極度の疲労感に襲われる。1月8日に受けた2度目の検査で陰性が確認されたが、自分の中では「まだ、体内にウイルスが残っている、またはウイルスが残っていなくても免疫が弱っていて殺せない殺菌が体の中にいるような感覚がある」という。

「味覚や嗅覚に異常はなく、学生時代、シンクロ(アーティスティックスイミング)をやっていたおかげか、幸い肺の調子も悪くないが、めまいや倦怠感は今も続いている。食欲も戻らず、体力をつけるために無理に食べているが、5キロやせた体重も戻らない」。

今までは、風邪をひいても軽くトレーニングをして汗をかくと体調がすぐ戻ったが、コロナはカロリーを消費すると疲労感が襲ってくる感じで全く違うという。「何もしなくても常に疲れを感じ、いつも眠い。買い物に出かけるだけで疲労困ぱいし、軽いトレーニングをした翌日は熱が出て寝込んでしまう」。体力だけでなく、インタビューにサクサク答えられないなど頭を使うことにも支障を感じるといい、個人差はあるものの、こうした後遺症は約1カ月間続くというのが、専門家の見解だ。

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