食事を変えた今シーズン、体が大きくなった
廣松さんが食事を作っている間、寺田は部屋でリラックスしながら自由に過ごしているという。最近は果緒ちゃんも少しお手伝いするようになり、ほのぼのと気持ちが和むひととき。サポートメンバーの力を借りてオンオフの切り替えをすることも、競技に集中できる秘訣なのだろう。
今シーズンに入って、寺田は平日練習日の食事スタイルを変えた。それまで練習場所の移動もあったため、昼食は補食を1~2回挟む程度の日もあったが、毎日昼食の時間をしっかりとるようになったことで、エネルギーの確保がしやすくなった。
またサプリメントの摂り方も見直し、筋肉量が増えて体重は昨シーズンから2kg増と、57kgをキープできるようになった。見た目でも体が大きくなったことは明白で、寺田がよく「体の厚みがあると走りやすい」と口にするように、レースでの爆発力につながっている。
寺田は「五輪では予選だけではなくて準決勝、決勝と3本走って、女子短距離・ハードル種目では日本人で2人目のファイナリストになりたい」と意気込んでいる。廣松さんは「達成できるようにチームで動いていきたい」と全力で支える。寺田が選手村に入るのは予選レース前日の30日。ギリギリまで日常を保ち、廣松さんの食事をもう1回食べて英気を養うという。
試合直前は好きなもの、ストレスかけず
試合時はいつもそうだが、直前の食事は寺田が好きなものを食べる形になる。「寺田選手の場合、こちらから食べ物を指定するとストレスになってしまうので、胃腸の状態を見ながら好きなものを食べてもらっています」。緊張して食事が入らない時は消化のいいもの、エネルギーゼリーなどの補食をとるようアドバイス。試合前や当日は帯同しているトレーナーにも様子を聞きながら、あらゆる情報をチーム間で共有し、試合前にすべて、やれることをやって送り出す。
管理栄養士の資格を取ったその年に、廣松さんは「チームあすか」入り。当時は「ラグビーで五輪を目指す」としていた寺田が、紆余曲折しながら高みに上っていく姿をそばでずっと見てきた。一方で、子育てする母親としての姿にも多いに刺激を受けてきた。「女性としてもすごく刺激をもらい、仕事面でも勉強させてもらい、調理の腕前もサポート開始時と比べるとレベルアップすることができたと思います」と29歳は振り返った。
サポート選手が五輪に出場するのは、管理栄養士にとっても夢の実現であり、醍醐味である。「自国開催の五輪で走れるなんて一生に一度のこと。楽しんで走って欲しい」。廣松さんの言葉にも熱がこもった。
【アスレシピ編集部・飯田みさ代】
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