前回のコラム「大人とは違う、ジュニアアスリートの体温調整のメカニズムと汗の質」で、ジュニアアスリートは大人とは汗の質やかき方が違うことをお伝えしました。今回はその続編として、補給する水分量の目安についてお話しします。

大人の場合、運動の前後に体重測定をし、2%以上体重が減らないよう水分補給するのが目安とされています。運動前は脱水状態ではないということが前提です。

しかし、発汗以外による熱放散が多いジュニアアスリートは、起床時や練習前にすでに体水分量が少なく、脱水していることがあります。つまり、練習前後の体重を把握するだけでは不十分です。さらには1日通して脱水状態が続いてしまっていることもあります。

この部分でも、ジュニアアスリートを大人と同様に考えるのでなく、競技特性や体調などをもとに個別に対応する必要があります。

「体重2%」はあくまでも目安

また大人の水分補給量を、体重を指標としているのは、体重1kgが水分1Lを消費するのと同じと考えるためですが、実際は呼気からの水分の排出や、エネルギーを産出する際に作られる代謝水を計算に入れていません。体重測定だけで正確に脱水の程度を把握できるわけではないのですが、体重の変化は計測しやすく、誰にでも分かりやすいので目安として設定されているのです。

このようなことから、「体重2%」といった一時の数値だけで判断するのではなく、天気、気温、湿度、暑さ指数(WBGT)などの環境や運動量によって、どれくらい体重が変化するかを継続的に計測し、同時に尿の色の濃淡や量などを主観的に判断することが脱水予防につながります。

水分を摂るときも、水やスポーツドリンクだけでなく、牛乳や食事からの汁物など、水分とともにタンパク質やミネラルの補給をすることも考えていきましょう。

今回は、食事から水分補給できるメニュー「冷凍餃子と厚揚げの中華スープ」を紹介します。冷凍餃子にお好みの野菜を入れるだけで簡単に作れます。厚揚げを加えることで鉄も補給でき、練習後の食事にもおすすめです。是非お試しください。

参考文献:Desbrow B, McCormack J, Burke LM, et al. Sports Dietitians Australia position statement: sports nutrition for the adolescent athlete. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2014;24(5):570-584.

Meyer F, Volterman KA, Timmons BW, Wilk B. Fluid Balance and Dehydration in the Young Athlete: Assessment Considerations and Effects on Health and Performance. American Journal of Lifestyle Medicine. 2012;6(6):489-501.

管理栄養士・田澤梓