アスリートにとって筋肉など体の材料となる栄養素、タンパク質は重要です。そのため「食事中に牛乳、食後にはプロテインを飲んでいます」という選手がいますが、牛乳やプロテインを追加しなければ、タンパク質の摂取量が足りないのでしょうか。

1回の食事でどれくらいのタンパク質を摂ればいいのか、という質問も多く寄せられます。今回はタンパク質の必要量についてお伝えします。

以前のコラム「筋肉を効率良くつけるためのタンパク質の摂取量とタイミング」で、筋肉構成率を上げるためのタンパク質の摂取量と回数について書きました。

①40gを6時間ごとに2回
②20gを3時間ごとに4回
③10gを1.5時間ごとに8回

運動後12時間の間でタンパク質80gをどう摂るといいのか、上記の3パターンで比較したところ、「②が一番、合成率が優れていた」とお話ししました。このことは、運動直後に単純にタンパク質を摂ったら良いという訳でなく、必要十分な量のタンパク質を、1日3食という通常の食事間隔よりも細かく分けて摂ることで、運動によって筋肉をつくる働きを高められることを示しています。

1日の摂取量をいつ、どれくらい摂るか

筋肉量を維持したり増やしたりするために、アスリートが1日に摂るタンパク質量の目安は体重1kgあたり1.6~2.0gで調整すると良いと言われています。激しい運動をする場合は、2.0gと多めに設定します(体重60kgなら1日96g~120g)。

筋肉の合成は食事と運動の刺激によって高まりますが、筋肉の合成を高めるために必要な1回でのタンパク質量は、若年者(18~37歳)において体重1kgあたり0.24gで頭打ちになると言われており(17歳以下のデータがないのは残念)、これを1回の食事で摂るタンパク質量の目安にします(体重60kgなら1食14.4g)。

つまり、アスリートが効率良くタンパク質を摂るには、体重1kgあたり0.3g程度を「3食+補食数回」に分けて、コンスタントに摂るのが良いのです。体重60kgのアスリートが1日に96~120gのタンパク質を摂るには、1食18g程度を5~6回に分けて摂るのがベストという計算になります。

1回の食事で大量にタンパク質を摂っても消化や合成ができません。使われないタンパク質は最終的には脂肪となり、体内に蓄積します。時間を空けずに少量ずつ摂る形であれば、食べ物から十分な量を補えます。自分の適量とタイミングを覚え、上手にタンパク質を摂ってください。

今回は、「冷凍イカとエビのアクアパッツァ」を紹介します。低脂肪で高タンパクのイカとエビは冷凍食材なので手間いらず。このレシピでは鯛あらを使いましたが、使わなくても調理可能です。一緒に調理する野菜も季節のものを入れて、アレンジもできます。

参考文献:
・Areta JL, Burke LM, Ross ML, et al. Timing and distribution of protein ingestion during prolonged recovery from resistance exercise alters myofibrillar protein synthesis. J Physiol. 2013;591(9):2319-2331. doi:10.1113/jphysiol.2012.244897

・Moore DR, Churchward-venne TA, Witard O, et al. Protein Ingestion to Stimulate Myofibrillar Protein Synthesis Requires Greater Relative Protein Intakes in Healthy Older Versus Younger Men. J Gerontol Ser A, Biol Sci Med Sci. 2015;70(1):57-62. doi:10.1093/gerona/glu103

管理栄養士・田澤梓