何を世界に発信するのか? 主力商品はノンアルコールの酒粕ドリンク「ましろ」。栄養豊富な酒粕に濃厚ミルクをブレンド。老若男女、車を運転するドライバーも飲める。プレーン以外に抹茶、ゴマ、きなこと味は4種だ。

この酒粕は石川県白山市鶴来(つるぎ)の酒蔵「萬歳楽(まんざいらく)」に由来。築地の守り神をまつる波除神社に御神酒「波除」(非売品)を年末12月23日に奉納している酒蔵だ。

波除神社の御神酒「波除」
波除神社の御神酒「波除」

平成が始まった30年前、波除神社には大きな獅子頭がなかった。獅子は大きな口で災いを食い尽くすとして、やぐらを組んで獅子頭を乗せて町内を練り歩く風習があった。そこで、大きな獅子を、一本木をチェーンソーで削って仕上げる加賀一刀彫の名工・知田清雲氏に依頼した。

樹齢約3000年の黒檜(ねず)原木(アラスカ産)から、重量1トンの雄「天井大獅子」と同700キロの雌「お歯黒獅子」がつくられた。毎年6月の祭りで担がれて築地町内の厄払いをしている。その際、波除神社は知田氏の工房と同じ鶴来に酒蔵を構える萬歳楽を紹介され、コシヒカリから御神酒をつくるプランも同時進行したのだ。

寺出社長 築地の伝統が復活した呼び水となった酒蔵の酒粕。今年用に10トン分を買い占めた。

加賀には江戸時代から伝わる「月うさぎ伝説」が語り継がれている。大雨が降り続き、農作物が大打撃を受けそうな年があった。そんな中、加賀の侍が白うさぎを助けたら、たちまち雨がやんで夜空に月が輝いて豊作を呼んだ。以来、白いうさぎは「月(運)を呼ぶ」とされている。

寺出社長 それで「ましろ」と命名しました。

築地名店の名物を凝縮

そしてRBOだ。ステーキ素材になるサーロイン(牛腰肉)の肉塊を56度の低温でじっくり焼きあげたローストビーフを30グラム前後にスライスする。そこに築地の名店の名物を擦り込んでいく。昆布「吹田商店」の「しそ塩昆布」、つくだ煮「江戸一飯田」の「実山椒(みざんしょう)」、青果「藤本商店」の「ゆずこしょう」に近江屋牛肉店の特製「ポン酢タレ」などをそろえた。

寺出社長 場外にはすばらしい食材であふれかえっている。RBOを使ってどんどん紹介する。だからましろ200円、RBOは300円で提供 する。この店舗業態を支店展開できれば、築地場外のアンテナショップにもなる。世界にも打って出られる。

中央区の市場機能を持つ「築地魚河岸」とも隣接しており、今後は連携もとっていく計画もある。12月中旬からひっそりと営業しながら、ましろもRBOも味の調整はして、自信作ができあがった。築地場外の「うめぇもんコラボ」。今年はラグビー・ワールドカップ、来年は東京オリンピック、さてどこまで広がっていくか。【寺沢卓】

◆波除神社 創建は万治年間(1658~1661年)と伝えられる。築地一帯は浅瀬で幕府による埋め立て事業がすすめられていた。しかし、波浪で工事は難航。そんなある日、波間にきらんと光る物体をすくい上げると稲荷明神のご神体だった。以降、大事にまつったところ、波穏やかになり、工事も順調に終了したという。「波除」はこの故事に由来し、無事に埋め立て工事の終了した場所は「土を築いた」ことから「築地」と呼ばれるようになった。

(2019年1月6日付日刊スポーツ紙面掲載)