<生クリームの科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。秋も随分と深まり、来月はクリスマスのシーズンに。ケーキを食べる機会があると思いますが、これからの季節にぴったりな「生クリームの科学」をお伝えします。

生クリームの状態と泡立つ原理

まずは、生クリームがどういったものか、泡立つ原理をお伝えします。

生クリームを泡立てた(ホイップ)ものが、ホイップクリーム。口の中でふわっと滑らかで、とろけるような舌触りですよね。このふんわり感は、生クリームを泡立てたときに含んだ空気によるものです。

元々、生クリームはどういう状態にあるかというと、牛乳の水分の中に乳脂肪、つまり油の粒(脂肪球)が浮いている状態(油中水滴:参考「マヨネーズの科学」)で、タンパク質の膜(脂肪球膜)で包まれています。

泡だて器でかくはんし、外から衝撃を与えると、乳脂肪の粒の膜が破れ、壊れて、脂肪がむき出しの状態になります。このときに油が一部にじみ出て、糊のように脂肪球同士がくっつき、気泡が表面に広がって網目状の鎖のように連なり、空気を抱え込むのです。

これがホイップクリームになる原理ですが、泡立てるのに時間がかかりますよね。また、泡立てすぎると脂肪球の膜が壊れ過ぎてクリーム全体がざらざらした感じになり、最終的には乳脂肪と水分が完全に分離してバターになってしまいます。

あの酸っぱい果物を入れるだけ?!

そんなホイップクリーム作りが簡単にできたらいいな、と思いますよね。そこで科学実験です。生クリームをホイップするときに「レモン」を入れてみましょう。

材料
・生クリーム(植物性クリーム)…200ml(1パック)
・砂糖…大さじ2
・レモン汁…大さじ1/2~大さじ1

作り方
(1)生クリームは良く冷やしておく。ボウルはきれいに洗って水けをとっておく。
(2)ボウルに生クリーム、砂糖を入れて軽く混ぜる。
(3)(2)にレモンを入れてよくかき混ぜる。
(4)30秒以上、もったりするまでよくかき混ぜて出来上がり

どうですか? 簡単にホイップクリームが出来上がったでしょ?!

原理は諸説あります。1つは、タンパク質。通常は、泡立てるという物理的な刺激によってタンパク質の膜を壊し、かつ空気を含ませますが、酸性のレモンを加えて科学的な刺激を与えることで、脂肪球膜を壊し(タンパク質の変性)、そのまま空気を含ませるという仕組みです。

酸性の力によってタンパク質の形が変わる(酸凝固)からだという説もあります。

こんな科学の裏技を使えば、力のない子どもたちも簡単にホイップクリームを作れます。ご家庭で楽しく手作りケーキを楽しむことができそうですね。

次のページそもそも生クリームってどういうもの?