<キッチンは実験室(32):しょうゆの科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。だいぶ冷え込む季節となりました。こんな時はホッと温まる煮物や鍋、スープが大活躍しますね。今回フォーカスするのは、それらの料理に欠かせない調味料「しょうゆ」です。しょうゆの「色」を紐解くと、原材料の違いが分かり、使い分けが自在にできるようになるかもしれません。

しょうゆの種類は5つある

日本で生まれ、進化したしょうゆは、JAS規格で5つに分けられます。

(1)しろ(白)、(2)うすくち(淡口)、(3)こいくち(濃口)、(4)たまり(溜まり)、(5)さいしこみ(さいしこみ)

これらは、特性、うま味成分の指標である窒素分や色の濃さ、薄さなどの数値を指標に分類されています。スーパーなどで見かける「卵かけしょうゆ」「燻製しょうゆ」などは、素材に合うようにしょうゆを味付けしたものです。

うすくちとこいくち、塩分強いのは

さて、ここでクイズです。「うすくちしょうゆ」と「こいくちしょうゆ」、どちらがしょっぱいでしょう?

正解は「こいくちしょうゆ」…ではなく、「うすくちしょうゆ」です。「こいくちしょうゆ」を薄めたものが、 「うすくちしょうゆ」のようなイメージがありますが、そうではありません。

うすくちは塩分濃度が18~19%なのに対し、こいくちは16~17%。うすくちは塩分濃度が高い分、少しの量を入れるだけで料理の味が整うので、だし巻き卵や茶碗蒸し、豆ご飯など素材の色を生かしたいときに使うのがベターです。一方、こいくちは風味が強く、濃厚で塩味が少ないので、肉じゃがなど色をつけたいときの煮物などによく用いられます。

関東と関西の「つゆ」の違いは?

また、おでんやうどんなど、関東と関西でだしやつゆが違うと言われます。関西は、昆布やかつおだしをたくさん使う「だし文化」。以前、味覚に関するコラムで説明しましたが、塩味にうま味を加えると、味の相乗効果によって塩味がより濃く感じられるので減塩効果があります。関西風だしが淡い色なのは、うすくちしょうゆがよく使われるからです。

<しょうゆのおすすめ使い分け一覧>

(1)しろ=素材を活かすもの
【特徴】うすくちよりもさらに淡く琥珀色。色がつかないので豆ご飯やだし巻き卵に。
【こんな料理に】煮物、だし巻き卵、炊き込みご飯

(2)うすくち=美しき京料理や関西のだしに
【特徴】塩分が高めなので少しの量で塩味が効いてくる。素材の持ち味を生かし、「色をきれいに」を演出。
【こんな料理に】煮物、お吸い物、だし巻き卵、クリームシチュー

(3)こいくち= 幅広く使える万能しょうゆ
【特徴】一般的なしょうゆで流通量の8割はこれ。とにかく万能!
【こんな料理に】つけしょうゆ、かけしょうゆ、煮物

(4)たまり=濃厚さとうま味はNo.1
【特徴】大豆の割合が多く、仕込み水を少なくし、うま味を凝縮。照り焼きやつけしょうゆとして。
【こんな料理に】赤身の刺身、照り焼き、焼き餅に

(5)さいしこみ=濃厚なうま味とコク
【特徴】一度こいくちしょうゆを作ったものを塩水のかわりに、再度仕込むため濃厚なしょうゆ
【こんな料理に】赤身の魚、焼肉、ステーキ、カレーなど料理の隠し味に

<ざっくり覚えるなら以下>

素材の味や色を生かしたいものに「しろ」「うすくち」
とりあえず万能しょうゆは「こいくち」
コクや深みを出したいときに「たまり」「さいしこみ」

まずはこれらを覚えて使い分けすると、日頃の料理がワンランクおいしくなるかもしれません。

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