鍋でおいしいご飯を炊く流れ
<浸水期>
研いだ米に水を吸わせる。水温によって吸水速度が変わるので、水温が高い夏場は30分、冬場は1~2時間程度と言われる。しっかり吸わせることでお米の粒組織が糊化しやすくなるが、吸わせすぎるとでんぷんの成分が水に溶け出してべちょべちょになることも。
<温度上昇期:弱中火~沸騰まで10分>
弱~中火で火にかけ、鍋全体を温めることでムラなく米に吸水させる。でんぷんは40~60℃で酵素によって分解されて甘くなるのでじっくりと加熱。ポイントは加熱時間。長すぎると、でんぷんが溶け出してべったりとした仕上がりに。逆に短いと吸水が悪く、芯の残ったお米になってしまう。
<沸騰期:強火で沸騰>
98~100℃ででんぷんを十分に糊化させる工程。中火~強火でしっかり沸騰させるとでんぷんの糊化が進み、動かなくなる。一気に加熱し、表面に張りを持たせることがおいしくさせるコツ。
<蒸し煮期:弱火15分>
沸騰したら、火を弱めて蒸気で蒸す。98℃の高温で米のでんぷんを変化させることが大切なので、米粒の間に残っている水分を水蒸気に変えて高温状態をキープする。沸騰してから15分程度でご飯が炊け、蒸らす最初の5分程度も含めて20分程度98℃以上を保てるのがベスト。火を止める前には、一瞬だけ10秒強火にする。おこげが欲しい人は30秒。パチパチといい焦げの匂いがしてきたらすぐ火を止めよう。これは「追い炊き」というもので、蓋についた水分を飛ばし、米に落ちないようにするためのもの(釜返りの防止)。
<蒸らし期:火を消して10~15分>
火を止め、蓋をしたまま、余熱で米粒の周りに残った水分を完全に吸収させる。加熱が不十分だと芯が残ってしまうため、この最後の吸収で米の表面の細胞を崩し、芯までふっくらとさせる。この余熱によって、表面についた余計な水分も乾き、米が締まってしゃっきりする。途中で蓋を開けてしまうと蒸らしが不十分になるだけでなく、温度が急に下がって米粒の表面に水滴がつき、べたべたとした仕上がりになってしまう。蒸らし時間が長すぎると、水蒸気が冷えて水っぽいご飯になるので要注意。蒸らし終わったら、最後にしゃもじで切って水分を飛ばす。
お米が炊ける工程をご理解いただけましたか? 水分と熱の微妙な塩梅が、おいしさを生み出す秘訣になっているのですね。
高い蓄熱性がおいしさを生む
土鍋で炊くご飯がおいしいのは、その高い蓄熱性から。土でできているため、他の鍋と比べて温めるのに時間がかかりますが、冷めにくいといった特性があります。このため、温度上昇期~沸騰期までは強火のままで良く、蒸し煮期と蒸らし期は弱火、もしくは火を消せば良く、火加減の調節が楽なのです。
自宅の鍋でもおいしいご飯
もちろん土鍋でなくても、自宅にある鍋でご飯をおいしく炊くことができます。「できるだけ厚手の鍋」「しっかりと蓋のできるもの」を用意して、上記の工程をたどってみてください。
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