<栄養素を無駄なく摂る食べ方:野菜編>

ヤマトイモは奈良県在来のげんこつ型のツクネイモの品種で、奈良県では伝統的に栽培されてきた「大和野菜」に認定されています。関東などでは、手のひらのようないちょう型のものをヤマトイモと呼んでいますが、奈良のヤマトイモとは別の品種です。

今回は、いちょう型のヤマトイモについて説明します。

粘りが強いのが特徴で、すりおろしてとろろの材料として使われることで知られています。4~5月に種芋を植え、11~12月に収穫します。

真空パックで売られているものが多いですが、表皮の色が薄めでハリがあり、傷がないものを選びましょう。ひげ根は多い方が粘りが強いとされています。

主な栄養素と無駄なく摂るコツ
長イモと同様に、ビタミンB1、ビタミンCが多く、カリウム、鉄、亜鉛といったミネラルや食物繊維も豊富です。長イモより水分が少ない分、味も栄養も凝縮されています。大根にも含まれるジアスターゼ(糖質を分解する酵素、アミラーゼ)といった消化酵素が含まれているため、生で食べることができます。すりおろすことで酵素の活性が強くなるため、とろろは理想的な食べ方です。

強い粘りのもとであるぬめりの成分は、胃粘膜保護、免疫力アップ、血糖値の上昇を抑制するなどの作用があります。タンパク質を分解する酵素も含むため、タンパク質を効率良く吸収し利用することができます。

疲労回復にも効果的なアミノ酸のアルギニンやアスパラギン酸は、長イモより豊富に含まれます。コクがあって味が濃いのはそのためです。

様々な酵素は熱に弱いため、効率良く摂るにはやはりとろろが最適です。とろろかけご飯や、刺身やオクラなどの野菜のとろろ和え、とろろそばなどは、加熱せずに食べられるメニューです。粘りを生かしてお好み焼きのつなぎ、グラタンやピザのソース、卵と混ぜてオムレツや卵焼き、鍋やうどんのつけ汁などにも利用できます。

酵素の働きは期待できませんが、食べやすい形に切ってノリで巻いて揚げる「磯部揚げ」や、炒め物の具にしてもサクサクとした食感でおいしくいただけます。

長イモと同様、切り口を酢水につけると変色が防げます。触ると手がかゆくなるのはシュウ酸カルシウムが原因。酢で洗うと取り除くことができます。

保存するなら
乾燥、光、水けに弱いため、丸ごとの場合は新聞紙に包み、冬場は冷暗所で常温保存します。この場合、1カ月ほど持ちます。

イモは呼吸しているため、真空パックで売られているものはすぐにパックから取り出します。カットしてあれば切り口をラップで覆って新聞紙で包み、野菜室へ。切ったらなるべく早めに食べましょう。

すりおろしたものは、冷凍で1カ月程度保存できます。使う時は電子レンジなどで加熱解凍せず、自然解凍にすると酵素活性が低下しません。皮をむいて丸ごと冷凍すれば、使用する時に冷凍のまますりおろして使うこともできます。

【管理栄養士・今井久美】