5種類の「企画チケット」
東京五輪には一般チケットの他に「企画チケット」と呼ばれるものが5種類ある。一般チケットと同じく5月にも抽選申し込みがスタートする「車いすユーザー向けチケット」と「東京2020みんなで応援チケット」。その後に「公式ホスピタリティパッケージ」「公式観戦ツアー」「学校連携観戦プログラム」も販売が予定されている。
スローガンは「奇跡をつくる 1人になろう」。大会を生で観戦し、選手を応援することで選手のパフォーマンスを最大限に引き出し、大会を成功に導こうというもの。目標は五輪とパラリンピック合わせて1000万枚のチケットを完売し、すべての会場を満員の観客で埋めることだ。
チケッティング部の鈴木秀紀部長は、平昌冬季五輪スピードスケート女子500メートルで金メダルの小平と銀の李相花が抱き合ってウイニングランする姿を生で見たという。「隣に座っていた韓国の人と一緒に喜びました。そういう経験はオリパラならでは。他の大会にない経験を、ぜひ探しに来ていただきたい」と話す。
一般チケットの最低価格は2500円だが「みんなで応援」「学校連携」は開催年に合わせて1枚2020円とさらに安い。いつ、誰と、何を見るか。一般チケットとともに企画チケットも視野に入れれば、五輪の興奮にじかに触れられる観戦プランの幅も広がる。
【車いすユーザー向けチケット】
車いす利用者と同伴者が一緒に観戦するためのチケット。一般チケットと同様に申し込み抽選で、車いすで観戦する人と一緒に同伴者の購入も可能。価格は検討中で、開閉会式を含む全競技が対象となる。
これまでの日本のスポーツ施設は車いす利用者に対して決して優しくなかったが、パラリンピックも行われる今大会はすべての会場に車いす席が用意されている。ちなみに、新国立競技場には1層、2層、3層スタンドにそれぞれ車いす席が用意され、五輪時で500席、パラリンピック時は747席ある。
【東京2020みんなで応援チケット】
12歳未満の子どもや60歳以上のシニア、障害のある方を1人以上含む家族やグループを対象としたチケット。1枚2020円で販売される。一般チケットと同じように申し込み-抽選-当選発表-販売となり予定枚数に達した場合は以降の販売はない。
大会の興奮を家族そろって味わってもらおうというのが目的で、最大人数などは未定。鈴木部長は「3世代で見ていただけるような枚数を検討しています」と話す。おじいちゃんと孫が一緒に観戦し、長く大会の感動を分かち合えるようなチケットになる。
販売枚数も未定だが、開閉会式を含むすべての競技で扱われる予定。席種は会場で最も安価な席のエリアになるが、家族やグループで見るには「お得な」チケットになりそうだ。
【東京2020五輪公式ホスピタリティパッケージ】
観戦チケットに会場内ラウンジでの飲食サービスなど高付加価値サービスがついたパッケージチケット。人気の高い陸上や水泳、テニスなど10以上の競技会場で実施予定がある。対象は法人と個人の一般観客で、同パッケージ販売用特設サイトで扱われる。
付加価値のついた高額チケットは、12年ロンドン大会から導入された。チケット販売は大会収入の大きな柱。組織委は立候補ファイルの時点で五輪とパラリンピック合わせて820億円と全収入の1割以上を予定している。今大会はグループチケットなど安価なチケットを提供する一方、高額チケットで全体の収入を確保したい意向だ。
ロンドン大会の特典付きチケットは最高で約65万円だった。今回の価格は未定だが、開閉会式の一般チケット最高額30万円よりも高くなる可能性がある。
【東京2020五輪公式観戦ツアー】
日本国内各地から競技会場に足を運んでもらうため、チケットとホテルや交通機関等をパッケージにした観戦ツアー。東京2020オフィシャル旅行サービスパートナーの「KNT-CTホールディングス」「JTB」「東武トップツアーズ」の3社が、法人・個人の一般観客に販売する。観戦競技全般を対象としているが、価格や内容の詳細については各旅行会社によって異なる。
JTBは昨年6月、東京五輪の開会式前日の7月23日から閉会式翌日の8月10日の期間に、1000室以上を有する7万トン級客船「サン・プリンセス」を横浜港に停泊させてホテルとして活用する「ホテルシップ」の実施を発表した。詳細はまだ決まっていないが、五輪観戦チケットとセットにした旅行商品も検討されている。
【学校連携プログラム】
より多くの子どもに観戦機会を与えるため、学校単位で販売するチケット。価格は1枚2020円だが、販売は自治体を通してのみで、一般販売はされない。対象となるのは全国の自治体で、小学校から高校および特別支援学校など。学校としての観戦となるため、日中の予選が中心となる。
64年東京五輪でも、東京都などの多くの小中高校が学校単位で観戦した。60代以上には、当時の思い出を口にする人も多い。今回も「スポーツの素晴らしさや世界中の人々と交流することの楽しさを体験し、一生の財産とする」ことを目指したプログラムになる。
東京都教育委員会は昨年10月、希望する都内すべての公私立校に「観戦機会を提供する」と発表した。チケット費用は都が負担し、学校単位で観戦する。都では16年度からすべての公立学校で「オリパラ教育」を実施しているが、大会を直接観戦することがその集大成になるとしている。
(2019年4月11日、ニッカンスポーツ・コム掲載)