<栄養素を無駄なく摂る食べ方:果物編>

梅はバラ科サクラ属の樹木になる果実で、強い酸味が特徴です。中国原産で、日本には飛鳥時代頃に生薬の烏梅(うばい)として伝わり、後に樹木が栽培されるようになりました。今ではお花見と言えば桜ですが、奈良時代のお花見は梅が主流だったそうです。

未熟な果実の種子にはアミグダリンという青酸配糖体が含まれています。この成分は分解されると青酸(シアン化水素)となり有害です。果肉にもアミグダリンが含まれているため、生では食べられません。そのためアルコールや塩に漬けたり、加熱したりと加工しているのです。

梅干しが広く食べられるようになったのは江戸時代で、それまでは薬として特に武士の間で珍重されていたようです。江戸時代の石見銀山では、「福面」と呼ばれる防塵マスクに梅肉を練りこんだという話もあります。

何を作るかによって選ぶ色やかたさ、大きさが違います。やわらかい梅干しや甘露煮、ジャムには黄色い完熟した梅。かたい梅干しには青い梅。梅酒や梅シロップには青や黄緑色のかたさがある梅を使うのが一般的ですが、好みの熟し具合で良いでしょう。いずれも全体にふっくらと丸く果皮にハリがあるもの、傷や斑点が出ていないものを選びましょう。粒がそろっているものの方がムラなく仕上がります。

主な栄養素と無駄なく摂るコツ
梅はカリウム、βカロテン、食物繊維が多く、カルシウム、マグネシウム、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸を含みます。

有機酸には、筋肉の疲労物質である乳酸を分解する、殺菌、食欲増進、ミネラルの吸収促進などの効果が期待できます。また、長時間加熱することで糖とクエン酸が結合し、血流改善効果があるムメフラールを生じます。

期待できる健康効果は、疲労回復、筋肉痛の軽減、食中毒予防、食欲増進、夏バテ予防、生活習慣病予防などです。梅干しは塩分を多く含むので、食べ過ぎには注意しましょう。

保存するなら
梅は収穫後も追熟が進みます。なるべく早く加工しましょう。低温障害を起こしやすいので、冷蔵保存はせず、新聞紙などで包んで冷暗所で保管します。

すぐに加工できない場合は、アク抜きをしてから保存用のポリ袋に入れて冷凍します。1カ月ほどで加工しましょう。使うときは冷蔵庫で解凍すると良いでしょう。

【管理栄養士・高木小雪】