<栄養素を無駄なく摂る食べ方:野菜編>

パクチーは地中海沿岸が原産とされるセリ科の一年草で、古くから世界各地で主に薬として利用されてきました。英語では「コリアンダー」、中国語では「香菜(シャンツァイ)」、和名は「コエンドロ」、独特な香りから別名「カメムシソウ」とも言われます。

平安時代の文献に薬味として出てきますが、日本ではあまり利用されてきませんでした。江戸時代にポルトガルから香辛料として改めて入ってきて、近代になり、カレーやソース、肉料理に使われるようになりました。1990年代にエスニック料理店が増え、葉の生食が一般に広まったため、生の葉をタイ語の「パクチー」、香辛料を「コリアンダー」と呼ぶことが多いようです。

葉の色が鮮やかでみずみずしく、葉先までピンと張ったものを選びましょう。茎が太いものは繊維がかたい場合があります。根付きの方が日待ちします。

主な栄養素と無駄なく摂るコツ
パクチーはビタミンやミネラルも豊富ですが、注目されるのはファイトケミカル(フィトケミカル)です。ファイトケミカルは植物が持つ自分自身を守る力で、苦味や辛味、色素、香気などがあります。

葉の独特な香気には、強い抗菌、抗炎症、抗ウイルス、食欲促進、消化促進、整腸、抗アレルギー、デトックス、鎮静など様々な作用があります。サルモネラ菌の増殖を抑える効果もあり、古代ローマでは肉の保存に使われていました。

果実は「胡荽子(こずいし)」という生薬でもあり、胃液や胆汁の分泌促進、健胃、止瀉(ししゃ)、駆風(くふう)などの作用があります。全草は芫荽(げんすい)という生薬で、発汗透疹に使われるそうです。

期待される健康効果は、食欲増進、風邪予防、食中毒予防、ガン予防、美肌効果、生活習慣病予防、精神安定、抗アレルギーなどです。

水溶性や揮発性の成分が多いので、損失を防ぐためには生食をおすすめします。

保存するなら
乾燥しないように新聞紙に包んでからポリ袋に入れ、野菜室に立てて保存します。水で湿らせたキッチンペーパーを根元に当てておくと鮮度が保てます。1週間ほど持ちますが、香気成分は揮発性で、栄養素は損失していくので、早めに使うようにしましょう。根付きのものは、グラスに水を入れて生けておくこともできます。

長期保存する場合は、洗って水けをきり、生のまま保存袋に入れて冷凍します。利用する際は、解凍するとドリップと一緒に栄養素が流れ出てしまうので、凍ったまま加熱して使用しましょう。1カ月ほどで使いきりましょう。

【管理栄養士・高木小雪】