<栄養素を無駄なく摂る食べ方:野菜編>

ミツバは日本原産と言われるセリ科の多年草で、各地の山野に自生しています。古くから主に薬草として使われてきました。江戸時代後期に栽培が奨励され、軟化栽培が始まり、野菜として食べられるようになりました。

通年出回る「糸ミツバ」
通年出回る「糸ミツバ」

店頭で見かけるものは「切りミツバ」「根ミツバ」「糸ミツバ」に大別されます。

切りミツバは、日光を当てずに軟白栽培したもので、収穫時に根元をカットします。茎は白くてやわらかく、香りが穏やかで冬が旬です。

根ミツバは、根元に土寄せして一部軟化させ、長期間生育させます。株がしっかりして、小さいゴボウのような根が付いています。シャキシャキした食感で風味が強く、春が旬です。

糸ミツバは青ミツバとも呼ばれ、根元まで日光に当たるため茎が緑色です。ほとんどが水耕栽培で、根元にスポンジが付いた状態で売られているものを多く見かけます。通年出回っています。

いずれも葉が鮮やかな緑色でハリがあるもの、茎がピンとしてみずみずしいものを選びましょう。鮮度が落ちると葉が黄変し、茎が半透明になります。

主な栄養素と無駄なく摂るコツ
ミツバはβカロテン、ビタミンK、カリウムが豊富ですが、栽培方法によって特にβカロテン含有量に大きな差があります。βカロテンを生100gあたりで比較すると、切りミツバ730㎍、根ミツバ1700㎍、糸ミツバ3200㎍となり、糸ミツバには小松菜よりも多くのβカロテンが含まれています。

香気成分はファイトケミカル(フィトケミカル)です。ファイトケミカルは、植物が持つ自分自身を守る力で、強い抗酸化力があります。ミツバの香気成分は食欲増進、消化促進、鎮静などの効果があります。風邪のひき始めや二日酔いの朝にミツバ汁を飲むという民間療法は理に適っています。香気成分は揮発性のため、損失を抑えるには生食か、短時間の調理にするとよいでしょう。

切りミツバは香りがあまり強くないため、お吸い物や茶碗蒸し、お雑煮など繊細な味の料理に向きます。アクが少なくやわらかいので、生食もできます。料理の彩りとして使われることが多いです。

根ミツバは食感、香りがしっかりしているので、加熱調理に向いています。かき揚げなどの揚げ物、キンピラなどの炒め物、鍋料理にも使えます。

糸ミツバは香りが豊かで、切りミツバ同様アクが少なくやわらかいので生食できます。加熱はできるだけ短く、親子丼や卵とじなどの仕上げに加えたり、焼き肉に巻いたりしてもおいしく食べられます。βカロテンが多いので、たっぷりと使いたいですね。

ミツバは「鴨児芹(かもこぜり、おうじきん)」という生薬としても利用されます。消炎、解毒、血行促進などの作用があります。

期待される健康効果は、食欲増進、風邪予防、ガン予防、美肌効果、生活習慣病予防、精神安定などです。

保存するなら
ミツバはあまり日持ちしません。香気成分は揮発性で、日が経つにつれ減っていきます。特に切りミツバは早めに使いましょう。

保存する場合は新聞紙に包んでからポリ袋に入れ、野菜室に立てて保存します。水で湿らせたキッチンペーパーを根元に当てておくと鮮度が保てます。葉や茎が濡れていると、濡れている部分から変色が始まって溶けてしまうので注意してください。根ミツバと糸ミツバはグラスなどに生けておくこともできます。

香りや食感は劣りますが、冷凍保存も可能です。洗って水けをきり、使用するときの大きさに切って保存袋に入れて冷凍します。使う分ずつ小分けするか、カチカチに凍る前に保存袋に入れたままバラバラにしておくと、使うときに便利です。解凍するとドリップと一緒に栄養素が流れ出てしまうので、凍ったまま加熱調理します。1カ月ほどで使いきりましょう。

【管理栄養士・高木小雪】