11月初旬から中旬にかけて、全国大会をかけた試合に挑んだ選手もたくさんいるでしょう。私がサポートしている選手やチーム、特に高校生は毎年この時期に「勝負の一戦」に臨んでいます。12日には高校サッカー、13日にはラグビーの静岡県大会決勝がありました。

ラグビーでは、東海大静岡翔洋が2大会ぶり12度目の花園出場を決めました。サッカーでは藤枝東は残念ながら、2年連続準優勝で全国切符を手にすることはできませんでしたが、決戦の日に向けて、できる限りの準備をして送り出しました。勝っても負けてもそこには意味があり、そこに向かって選手が努力する日々は本当に尊いです。

今回は、彼らに伝えてきたリカバリーとエネルギー補給についてお伝えします。

試合前に何を食べたらいいか

「試合前に何を食べたらいいか」。試合前になると誰もが思うことでしょうが、試合の日だけしっかり食べる、なんてことはできません。当日だけ調整すれば実力を発揮できる「魔法の食べ方」はないのです。

常に、どんな場所でも緊張してもしっかり食べられる、そんな「胃腸を強くするトレーニング」をしておくことが大事です。一番調子が良かったパターンを思い出し、「自分の成功ルーティン」を作り上げて心も整え、どんな環境であっても自分の力を最大限に発揮できる準備をしていきましょう。

多くの選手を見てきましたが、試合当日の朝食をしっかりとっていない選手、つまり朝から「補食」のような朝食しか食べていない選手が多いように感じます。もちろん、早朝から試合が始まるケースは別ですが、昼前後に試合がスタートする場合は、いつも通りしっかり食べることでスタミナ切れを起こさずに1日を過ごすことができます。

試合前日からの準備5ポイント

試合前の食事として、前日からの準備5ポイントを紹介します。

(1)炭水化物で消化のよい「エネルギー」をため込む

前日の夕食と試合前3~4時間前の食事は、主食(ご飯・パン・麺類)と果物を多めに取り、おかずは少なめにします(脂質の少ない肉、魚、卵、大豆製品は取る)。食事全体の量は普段と変えず、バランスだけ変えるようにします。

(2)エネルギー代謝を助ける「ビタミンB群」の多いおかず(主菜)を意識する

試合の3~4時間前は主食だけ多く取り、おかずをほとんど取らないため、大切な試合でエネルギー切れを起こしている選手も多いのです。消化の良い主菜も少し取りましょう。タンパク質とともに、ビタミンB群も取れるため、効率的にエネルギー代謝ができます。

(3)試合中におなかが痛くなりそうな「消化の悪いもの」は避ける

消化の悪いもの(特に脂っこいものやタンパク質が多いもの)を食べ過ぎないようにします。最近はさすがに少ないようですが、朝からホテルバイキングで、ベーコンやソーセージ、鶏の唐揚げやハッシュドポテト、ゲン担ぎでトンカツを食べないように。鶏ムネ肉の親子丼や、脂身の少ない豚丼などはお勧めです。

また、ガスがたまりやすい食物繊維の多い野菜(サツマイモ、ゴボウ、カボチャなど)も控えてください。海藻類や生野菜も当日の朝は避けましょう。また刺身などの生魚も避けた方が良いでしょう。

(4)水分をこまめに取る

試合直前に集中して水分補給を行う選手がいますが、水分も栄養素もいっぺんに吸収できません。普段からはもちろん、前日から特に意識して水分を取りましょう。パフォーマンスを左右するためには身体を潤わせておく必要があります。

(5)普段から食べ慣れているものを食べる

胃腸の強い選手でも、緊張すると消化機能が鈍ります。食べ慣れていないものを食べると内臓に負担をかけます。特別な料理を用意する必要はありません。内臓をびっくりさせないようにしましょう。

試合3時間前の補食に

午後からの試合の場合、試合3時間前に軽食を出しています。今回は、そこで提供した「枝豆入りだしおにぎり」を紹介します。静岡県袋井市で採れた香り豊かなおいしい秋採れの枝豆を使いましたが、冷凍のむき枝豆を使ってもおいしく作れます。

静岡県産の秋採れ枝豆を使っただしおにぎりを提供
静岡県産の秋採れ枝豆を使っただしおにぎりを提供

先日の試合では、「枝豆入りだしおにぎり」に「餅巾着入りの力うどん」もプラスしました。寒い日には、温かいスープが大変好評です。緊張して食が進まないときは、「だし」の香りも助けになるようです。

枝豆入りだしおにぎりに「餅巾着入りの力うどん」もプラス
枝豆入りだしおにぎりに「餅巾着入りの力うどん」もプラス

選手たちが、決戦の舞台に立つためのサポートができることに感謝しています。競技を続けるにしろ、一線を退くにしろ、この先も続く未来のために、学んだ食事を生かして欲しいと思います。

静岡スポーツ栄養研究会/管理栄養士・中野ヤスコ