先日、食に関する知識や様々な能力を身につける機会として、鹿児島県大崎町で小学生向けの食育体験イベントを企画、実施しました。子どもたちが日頃、食事をとるまでの過程や関わる人たちのことを考え、自分たちで実際に食材を選び、調理をして食べるまでを体験するというものです。メニューは郷土料理の「さつま汁」でした。

郷土料理「さつま汁」をグループで作る

メイン食材の鶏肉は、全国1位の生産量(ブロイラー)の鹿児島県の中でも、大崎町がトップの産地であることも学び、地元食材への理解を深めました(※)。また、産地・栽培方法の違いによって価格に違いが生じることも理解しました。

その上で、グループに分かれて、予算と栄養価を考えながら食材選びを行います。栄養ごとに分類された食材を、産地や価格を見比べながらドラフト形式でグループごとに選択していきましたが、グループによって重要視する基準が異なり、組み合わせ、食材数、彩りなど、個性がよく表れていました。

食材をグループで話し合い、決めている様子
食材をグループで話し合い、決めている様子

調理はJA女性部の協力の下、子どもたち自身で食材カットから調理までを行い、それぞれおいしそうなさつま汁ができました。包丁を触ったことがない子も他の子の包丁使いを見たり、使い方を習ったりしながら挑戦。低学年から高学年までそれぞれができる作業を分担し、チームで調理をすすめていました。

イベント後の感想にも「みんなで協力したからいつものご飯よりおいしかった」「家でもつくりたい」「食べ比べをして他のチームは味がちがった」など、気づきや学びのある楽しい体験ができたようでした。

忙しい小学生、家庭での体験も大切に

子どもたちは毎日忙しく過ごしています。特にスポーツを始めると、学校に、スポーツ活動に、さらには塾通いに忙しく「時間がない」と言い、どのように食事が作られているのか、考えたことのない子どもたちも少なくありません。

あえて体験活動に参加しなくても、ご家庭で保護者が毎日行っていることを一緒にするだけでも「体験」になります。「今日は何にする?」とメニューを考え、スーパーで食材を見比べながら「どれにする?」と一緒に選んだり、「やってみる?」とできそうな作業を手伝ってもらったりすることも大事な経験です。少し時間と手間はかかるかもしれませんが、こうした体験は、実践する力を習得することにつながります。親子で少し時間を作って、チャレンジしてみてください。

今回紹介するレシピは、「鶏肉とキノコのタレみそ焼き」です。大崎町特産の「鶏肉」を使用しました。味付けは焼き肉のたれとみそだけ。オーブントースターで焼くので火を使わず、ほったらかしで仕上げられる簡単レシピです。

アルミホイルで作るので、後片付けも簡単
アルミホイルで作るので、後片付けも簡単

食育で身に付けたい知識と能力

最後に、食育基本法に掲げられている内容を記しておきます。

「子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも『食』が重要である」とされています。また、「様々な経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育」が推進されていて、実践においては以下が掲げられています。

食育で身につけたい知識
①栄養に関する理解
②フードチェーンに関する理解
③食文化に関する理解
④食の安全に関する理解

食育で身につけたい能力
①味がわかる能力
②食べ物を選択し組み合わせる能力
③料理する能力
④健康な「からだ」を育てる能力

※参照:農林水産省「食育基本法」、農林水産省「令和4年生産農業所得統計」

KAGOSHIMA食×スポーツ/管理栄養士・田畑綾美