アスリートにとっての食事は、パフォーマンス向上や日々のよりよいコンディショニングのために、とても重要な役割をもっています。

チームや選手に対して、栄養士という立場で関わっていると、当たり前ではありますが、それぞれの目的や課題解決のために栄養の重要性やその補給方法などについて伝える機会が多くあります。意識の高い選手であれば、自発的にそこを明確にとらえて食事をとらえています。

また、食事には栄養面における役割だけではないところにも効果が期待できます。例えば、「試合に向けたキツイ減量を終えたら大好きなケーキを食べられる」「ハードなトレーニングが続く合宿中の唯一の楽しみが食事」というように、ご褒美としての位置づけです。それをモチベーションの1つにして、その一瞬、その時期を頑張りぬける! といった使い方もでき、心理的な欲求を満たすことにつながるとされています。

これらのことを踏まえると、身体と心にとって食事は重要であると言えます。

強制的な制限は反動リスクも

一方、中高生アスリート関わっていてよく見聞きするのは、「菓子禁」「ジュース禁」といったチームルールの下、強制的に制限されている状況です。

体脂肪増加の背景に菓子のとりすぎやジュースのとりすぎが課題としてあった場合、その解決策として「菓子禁」「ジュース禁」という行動計画を立てることはあります。しかし、チームルールとして一律に制限が課せられた場合、選手自身がその目的や理由について認識することがとても重要になってきます。制限がなくなったときに反動的に過剰摂取を招くリスクがあるからです。

さらに高校生アスリートの場合、ジュニア期からシニア期にステージアップすると同時に食環境が変わることも多くあります。自宅や寮で食事を準備される環境から、自ら準備・選択しなければならなくなったとき、自身の食欲や嗜好に委ねた食行動をとってしまうと栄養摂取バランスが大きく崩れてしまうことになります。

ご褒美やコミュニケーションの場としても

競技を続ける、続けないかは別として、自身の健康状態を維持することがベストなコンディションを作ります。パフォーマンス向上を目指した身体をつくるには、食・栄養の基本的な知識や技術が求められます。ジュニアの頃から食への関心を高め、その目的や方法について理解し、自ら自発的に実践できるようになることは、次のステージにおいても重要です。

最初にお伝えしたように、食事にはご褒美としての位置づけや、コミュニケーションの場としても使えます。チームビルディングや職場環境の改善において食事会が設けられている例もあります。

食・栄養は健康に生きていく上で欠かせないものであり、さらにはアスリートにとってパフォーマンスを支える大事な要素でもあります。様々な役割を持つからこそ、食事をポジティブにとらえた食行動を促していくことが大事でしょう。

今回紹介するレシピは「キノコそぼろの混ぜおにぎり」です。食物繊維が不足しやすいときにはキノコがおすすめです。お好みのキノコを使って作れます。

包丁ではなく、キッチンばさみでキノコを細かくカットしてもOKです。フライパン1つでできるので、1人暮らしの選手でも手軽に作れます。具を作り置きして、ご飯にトッピングしても良いでしょう。

KAGOSHIMA食×スポーツ/管理栄養士・田畑綾美