入り口は堅くない方がいい
桐蔭学園ラグビー部でも今夏に子どもとのふれあいがあった。近隣地域の小学生と保護者を対象としたラグビー教室だ。
藤原 写真撮影など、なごやかに始まって、難しい技術指導はいっさいなし。生徒がうまくコミュニケーションを取りながら「ボールを持って相手を抜いてみよう」「単純に走って、高校生と1対1だ」「次はみんなが守っているこのエリアを抜けてみよう」と…。子どもは抜くのが楽しい。これが、ラグビーの醍醐味(だいごみ)です。
中には相手から逃れようとする小学生を高校生が半分ふざけて持ち上げ、笑いを誘う場面も。子どもたちはすっかり夢中になる。
藤原 型通りにやったら駄目だと思いました。型通りだと子どもは飽きちゃうし、話をきかない。聞いていても集中力が続かない。大人がつくったものは、子どもには面白くないのかもしれない。スポーツはそもそも遊び。遊びから始まった方が面白いだろうと、危なくなければ何をしてもいいという感じでした。
かつての子どもは近所の仲間と独自の遊びを考え、人数や年齢に応じて独自ルールを加えて楽しんだ。その感覚だという。
藤原 入り口は堅くない方がいい。まず、ボールに触らせて走らせる。ボールの形が、他の競技と違う点に興味を持ったら、「じゃあ、蹴ってみよう」「次は投げてみよう」。さらに、受け取れるようになって、ゲーム感覚になっていけばもっといいと思います。
スポーツ=遊び、楽しさから入ることを勧めた。
◆今泉清(いまいずみ・きよし)1967年(昭42)生まれ、大分市出身。6歳でラグビーを始め、大分舞鶴高ではフランカー、早大でBKに転向し、主にFBとしてプレーした。華麗なステップと正確なプレースキックで、大学選手権2回優勝(87、89年度)、87年度日本選手権では東芝府中(当時)を破っての優勝に貢献。ニュージーランド留学後、サントリー入り。95年W杯日本代表、キャップ8。01年に引退した後は早大などの指導、日刊スポーツなどでの評論・解説、講演など幅広く活躍。
◆藤原秀之(ふじわら・ひでゆき)1968年(昭43)東京生まれ。大東大第一高でラグビーを始め、85年度全国選手権でWTBとして優勝。日体大に進む。卒業後の90年に桐蔭学園高で保健体育の教員、ラグビー部のコーチとなり、02年から監督に。同部は全国選手権に96年度初出場、昨年度まで4回連続17度出場。決勝進出6回、優勝1回(10年度、東福岡との両校優勝)で、当時のメンバーに日本代表の松島幸太朗がいる。全国選抜大会では17年から3連覇。今や「東の横綱」と呼ばれるまでに同部を育てた。
(2019年10月20日、ニッカンスポーツ・コム掲載)