<全国高校ラグビー大会:桐蔭学園23-14御所実>◇決勝◇7日◇大阪・花園ラグビー場

第99回全国高校ラグビー大会には、唯一の19歳ラガーマンがいた。憧れの花園で躍動した御所実(奈良)のプロップ島田彪雅(ひゅうが、3年)は16歳で、1度はラグビーを諦めた過去がある。東海大大阪仰星に入学するも1年足らずで不登校になり退学。だが、大好きだったラグビーを諦めきれず、御所実へ転学。そんな壮絶な人生に、ずっと寄り添った母・賀奈子さん(46)が聖地・花園のスタンドで当時を振り返った。

御所実プロップ島田彪雅(3年、中央)の応援で花園に観戦に駆けつけた姉の寿莉亜さん(左)、母の賀奈子さん(右)(撮影・真柴健)
御所実プロップ島田彪雅(3年、中央)の応援で花園に観戦に駆けつけた姉の寿莉亜さん(左)、母の賀奈子さん(右)(撮影・真柴健)

16歳で1度はラグビー諦めた

黒色ジャージーを着て、島田彪雅は生まれ変わった。3年前の秋。16歳だった彪雅は、自室に引きこもった。未来が見えず、母・賀奈子さんは頭を悩ませた。

「トイレのときしか、部屋から出てこない。学校に行かないだけならともかく、閉じこもってしまったんで…。あんまり会話もなかったです、あのときの家庭は地獄でした」

15歳で胸を躍らせて入学した東海大大阪仰星だったが、うまくなじめず。16歳の誕生日を迎えた8月には、ラグビーの練習に行かなくなった。

「菅平(長野)の夏合宿は悲惨でした。嫌がる彪雅を私が無理やり…。車に乗せて『グズグズしてても仕方ない。ラグビー部を辞めるって言いに菅平まで行くで!』って。でも、あのときは辞めなかったですよね。ラグビー、大好きやったから」

だが、秋には学校を休むようになった。「もう学校に行くか行かないかは、どうでもよかった。なんとかして部屋から引っ張り出さないと…。だから『退学届、一緒に出しに行こう』って」。16歳の冬に退学。そこから先は、何も見えなかった。

「学校を辞めたとき『俺、働かないとダメかな?』って彪雅が聞いてきて。母子家庭だから…って考えすぎなんですよ、あの子は」。大好きなラグビーを続けてほしい-。母には、その一心しなかった。

「なんとか外に出てほしくて…。偶然、3歳上のお姉ちゃん(寿莉亜、22)が働いてた運送会社が12月のお歳暮のバイトを募集してたから『行ってみたら?』って。いや、もうそのときは、『お姉ちゃんと一緒なら大丈夫やから行ってこい!』って言うたと思います」 1カ月間、アルバイト生活を経験すると、気持ちは楽になった。「またラグビーがしたい…」。そんな気持ちが胸にわきあがってきた。

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