1歳下の仲間が毎日迎えに
ラグビーがきっかけで結ばれた1歳下の仲間も、彪雅を奮い立たせた。御所実SO高居海靖(3年)は、3年前、壊れるぐらい島田家のインターホンを押した。
「海靖くんが毎日毎日、電話をくれて…。『彪雅くん一緒にラグビーやりましょうよ。今日、16時からの練習に来てくださいよ。勉強も一緒にやりましょうよ』って。電話をくれたら家まで迎えに来てくれて『到着しました!』って。その子が居たから、うちの子は今があるんです…」
1度はフェードアウトしたラグビー人生。重たい心の扉をこじ開けたのは母親の愛情、そして仲間の存在だった。20年1月7日、決勝の舞台でも「3番」を背負い、花園で奮闘した。
「3年前は考えられへん舞台にアンタは立ってるんやで、って。うちの家は地獄やったんやから。今はもう…。彪雅が寮から家に帰ってくるのが、楽しみで楽しみで…。ご飯もなんでも作って。夜な夜な仕事から帰ってきて、ビールを飲みながら彪雅の活躍してるシーンを見るのが、今の私の生き甲斐なんです」
母の思いは息子に届いた。「泣いても泣いても、うそじゃない。ラグビーボールを持って、彪雅は思いっきり走ってる…。こんな幸せが待ってるなんて思ってもなかったんです」。
タクシードライバーの賀奈子さんは、子どもを思ってハンドルを握っている。そんな支えがあったから、彪雅には今がある。
「夢ですよね? この現実はありえないんです。3年前、こんなことになるとは考えもできなかった。たった3年で…。こんなに人って変われるんですね。あのままの人生だったら彪雅は…。この道はないんです。強くなったなぁ彪雅…」
どんなに小さくたっていい。1歩前に踏み出せば人生は変わる。【真柴健】
(2020年1月7日、ニッカンスポーツ・コム掲載)