梅雨の季節です。長雨が続き、日照時間が短くなって、気温が上がらず肌寒く感じる日もあります。
一方、梅雨の晴れ間は特に気温が高く、湿度も高いため、「熱中症」が起こりやすい傾向にあります。梅雨が明けて本格的な夏が来れば、晴天が続いて連日、真夏日や猛暑日となり、夜間も気温が下がらず、熱帯夜が続きます。そうなると「熱中症」のリスクはますます上がります。
「熱中症」予防には水分補給が重要であることは皆さん、ご存じかと思いますが、実際には「熱中症」は多発しています。今年の夏こそ「熱中症」にならないために、改めて水分摂取の方法について今月、来月の2回に分けてお話ししたいと思います。
体の約6割は水、生命活動に不可欠な働き
体内の水分量は、体重の約50~60%を占めています。血液やリンパ液、細胞内液はすべて水分で、筋肉や脂肪組織の中にも水分があります。
体内における水の働きは以下の3つがあり、いずれも生きて行くためにはなくてはならない働きです。
(1)老廃物の排泄や栄養物質の運搬をしている「運搬作用」
(2)体内で行う化学反応はすべて水に溶けて進行している「溶解作用」
(3)気温や室温の変化に対して皮膚から汗を出して効率的に体温を下げる「体温保持」
体内の水分、塩分バランスの崩れから熱中症に
「熱中症」とは、高温多湿な環境に長くいることで、徐々に体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指します。屋外だけでなく室内で、何もしていないときでも発症し、急に悪化して救急搬送、場合によっては死亡することもあります。運動する時は特に、高温多湿な環境に長くいなくても、一度に汗を大量にかいたり、水分補給が上手にできていなかったりすれば、起きる可能性が高くなります。
しかし、正しい知識を持って予防すれば熱中症は防ぐことができます。競技力を上げることに注力するのも大切ですが、競技力向上は、日々の安定したコンディションがあってこそだと思います。熱中症予防の正しい知識を身に着けて、暑い夏を乗り切りましょう。
脱水しないために1日に約1.5ℓの水
尿や不感蒸泄(呼気に含まれる水分や皮膚から蒸発する水分など意識しなくても排出される水分)など、体から出る水分と食事などから得られる水分の出納を考えると、1日1.5ℓくらいの水分補給が必要と言われています。必要な量の水分が補給されないと「脱水」を起こし、下記のような様々な症状が身体に現れてきます。
<水分損失率と現れる脱水諸症状の関係>
●1% 大量の汗、喉の渇き
●2% 強い乾き、めまい、吐き気、ぼんやりする、重苦しい、食欲減退、血液濃縮、尿量減少、血液濃度上昇
●3% 3%を超えると、汗が出なくなる
●4% 全身脱力感、動きの鈍り、皮膚の紅潮化、いらいらする、疲労および嗜眠、感情鈍麻、吐き気、感情の不安定(精神不安定)、無関心
●6% 手足のふるえ、ふらつき、熱性抑鬱症、混迷、頭痛、熱性こんぱい、体温上昇、脈拍・呼吸の上昇
●8% 幻覚・呼吸困難、めまい、チアノーゼ、言語不明瞭、疲労困憊、精神錯乱
●10~12% 筋痙攣、ロンベルグ徴候(閉眼で平衡失調)、失神、舌の膨張、譫妄および興奮状態、不眠、循環不全、血液および血液減少、腎機能不全
●15~17% 皮膚がしなびてくる、飲み込み困難(嚥下不能)、目の前が暗くなる、目がくぼむ、排尿痛、聴力損失、皮膚の感覚鈍化、舌がしびれる、眼瞼硬直
●18% 皮膚のひび割れ、尿生成の停止
●20% 生命の危機、死亡
※脱水症状は、小児の場合で5%ほど不足すると起こり、成人では2~4%不足すると、顕著な症状が現れはじめる
(出典:山本孝史「基礎栄養学」南江堂 P227、2004)
まずは日常生活でこまめに水分補給
1日に1.5ℓの水分を摂ろうとすると、コップ1杯(150ml程度)で10回も飲まなくてはなりません。起床後すぐ、朝食時、10時、昼食時、15時、夕食時、入浴前、入浴後、就寝前…これでも8回です。
そう考えると1.5ℓを飲むのは結構難しいと思いませんか? 学校に水筒やペットボトルを持って行っている人も多いと思いますが、その水筒は何ml入るものですか? また、持って行った水筒はカラになりますか?
学校に水筒も持って行かない、持って行っても全部飲みきれないという日常生活での水分補給ができていないアスリートは、運動を始めるとすぐに脱水を起こします。いくら運動している時に意識して水分補給していても、最初から脱水しているようではパフォーマンスが落ちるのは当然のことなのです。
脱水を予防するには、練習前から自分の体の中の水を十分満たした上で、運動で出る汗の分を運動中、もしくは運動後に水分で補うようにしなくてはなりません。まずは日常生活でこまめに水分を補給することを習慣化し、脱水を起こした状態で練習前に臨むことがないようにしたいものです。
食欲がない時に重宝するサバ缶のつけ麺
今回、紹介するのは「サバ缶の豆乳ゴマつけ麺」です。気温が高くなると食欲が低下するアスリートが多くいます。食欲がない時はあっさりとした麺が好まれますが、麺だけだと炭水化物に偏ってしまい、タンパク質やビタミン・ミネラルが不足しがちになります。
麺でもなるべく多くの食材を使えば、1品でも栄養素の偏りをなくすことは可能です。「サバ缶の豆乳ゴマつけ麺」はサバ缶で手軽にタンパク質が摂れます。今回はナス、シメジを使っていますが、つけ汁の野菜の種類や温度を変えることでいろんなバリエーションが楽しめます。
麺の替わりにご飯を入れて「冷や汁風」にすることも可能です。食事から水分を摂れるメニューとしてもおすすめです。