長かった「緊急事態宣言」が解除されました。感染症対策の習慣化に加え、ワクチン接種も進み、新型コロナを「正しく恐れる」ことができるようになってきました。しかし、これから冬に向かって気温が下がり、空気の乾燥が進むと風邪やインフルエンザなど様々な病気のリスクが上がってきます。今こそ食事面から免疫力をアップしませんか? 今回は食事と免疫力の関係についてお話しします。
そもそも「免疫」とは?
「免疫」とは、「ウイルスや細菌(=異物)を侵入させない」「侵入した異物と戦う」という2つの「仕組み」のことを言います。まず、ウイルスや細菌、花粉などを侵入させないように「粘膜」で守ります。粘液は目、鼻、口、腸管にあり、目にゴミが入った時に涙が出る、鼻に花粉が入った時に鼻水やくしゃみが出るのは、異物が侵入しないように外に出すという作業をしているのです。
しかし、粘膜免疫を突破して体内に侵入し、増殖するウイルスや細菌は少なくありません。増殖してしまった状態が「感染」で、感染すると「全身免疫」が働きます。全身免疫では、免疫細胞が病原体を捕えて排除するよう働きます。「免疫力」とはこの仕組みや、それぞれの細胞の強さのことを言います。
免疫力と食事の関係
低栄養状態では免疫機能が低下することが知られていますが、エネルギーとタンパク質だけでなく、ビタミンやミネラルを含むほぼすべての栄養素の不足が免疫機能低下を引き起こします。言い換えると、タンパク質、炭水化物、脂質の三大栄養素を適量摂ってエネルギーを十分に確保するだけでなく、ビタミン・ミネラルもしっかり摂ることが免疫機能を向上(免疫力アップ)させるのです。
つまり、何かを食べると免疫力がアップするということではなく、食事の基本である「主食+主菜+副菜+牛乳・乳製品+果物」を揃えて、バランスよく食べることが一番効果的ということになります。
免疫と体温の関係
免疫細胞は白血球の中にいて血液で全身を巡っています。体温が下がり血行が悪くなると、体内に異物を発見しても素早く攻撃できません。免疫力が正常に保たれる体温は36.5℃程度で、体温が1℃下がると免疫力は30%低下し、逆に1℃上がると一時的には最大5~6倍アップするともいわれています。
低栄養でエネルギー不足の場合は、体温の素になる栄養素の炭水化物も不足していることが多いため、低体温になる可能性が高くなります。手足が冷える女子アスリートが多くいますが、エネルギー不足が冷えにつながっていることがほとんどです。
免疫と腸の関係
先に述べた通り、免疫の第1段階は粘膜で、この粘膜は腸にもあります。腸は口から様々な異物が入ってくるため、免疫細胞がたくさん必要です。「免疫細胞の約7割が腸に存在している」と言われており、それらの免疫細胞が力を存分に発揮するには腸内の環境が良くないといけません。
いくらバランスのよい食事をとっても、腸内環境が悪くて免疫細胞が働かなければ意味がありません。「免疫力アップ=腸内環境を整える」と言われるのはそのためです。腸内環境の整え方については、次回(12月)にお届けします。
今回、紹介するレシピは「トマト鍋」です。バランスの良い食事のために食事の基本を揃えるのは分かっても、実際に揃えるのはなかなか大変です。1人暮らしだったり、家族の食事時間がまちまちだったり、好き嫌いがあったりと毎日の献立に頭を悩ませている方は多いのではないでしょうか。
1つのメニューで「主食+主菜+副菜」
食事の基本通りに揃えようとすれば「主食+主菜+副菜+牛乳・乳製品+果物」の5品となり、作るのはもちろん、これだけの皿を洗うと思うとゾッとします…。そんな時は1つのメニューで複数を賄える献立を使えば、手間も省けます。「主食+主菜+副菜」が一度に摂れる温かい鍋はこれからの季節にピッタリです。