今年も夏がやってきました。この時期になると、各メディアでも熱中症の話題が取り上げられ、これほど多くの熱中症に関する情報があるのに、学校などの現場ではまだまだ予防ができていないようです。特に5~6月、9~10月は運動会などの屋外行事もあり、集団で搬送されることも少なくありません。

学校でも指導をしていると思いますが、身体状況は個人によって異なるため、一律の指導や管理では防ぎようがありません。要は、自己管理(自分で自分の身体は守る)をしないとダメなのです。今回は、脱水予防のための水分摂取方法を時系列でお話ししたいと思います。

計画→準備→実行→振り返り

いくらこまめに水分補給しなければいけないと思っていても、なかなかできるものではありません。習慣化しないといけないのです。毎日、「計画(考える)」→「準備」→「実行」→「振り返り」の繰り返しが必要です。この繰り返しを身に着けるためのチェックリストを作ってみました。皆さん、当てはまるかどうか、確認してみてください。

なぜこの項目のチェックが必要なのか、1つずつ説明していきましょう。

チェック1
寝ている間にも脱水が起きるので、どのくらい脱水したのかを確認します。

チェック2
その日の天気や気温で熱中症のリスクが異なります。水分補給計画の参考にするためにも朝の天気予報は必ずチェックしましょう。

チェック3・5・10
食事をきちんと摂ることはエネルギーや栄養素の補給もありますが、水分・塩分の補給を目的としています。

チェック4・6
午前中や運動前の水分補給は、脱水した状態で運動をしないためにも不可欠です。

チェック7
運動の時間・強度・内容によって発汗量が異なります。発汗量を予測して水分(内容・量)を準備しておかないと、水分補給に失敗します。水分の入ったボトルなどは、補給しやすいように運動場所の近くに準備します。

チェック8
運動中の水分補給が適切に行われているかの評価は、運動前後の体重変動でします。運動後の体重が運動前より大幅に減っている場合は脱水を起こしています。体重減少率を3%以内にとどめるのが理想なので、それ以上減らないように運動中の水分補給はしっかり行いましょう。「のどが渇いた」と感じた時にはすでに2%程度脱水していると考えられるので、のどが渇かないように水分補給を行いましょう。

チェック9
運動中の水分補給が上手にできていないと、運動後に多くの水分を飲んでしまいます。そうなると、胃に負担がかかるだけでなく、水分でおなかが膨れて、練習後の補食や夕食が食べられなくなります。

チェック11
脱水状態にある時は、トイレの回数が減ったり、トイレに行っても尿の量が少なく、色が濃くなったりします。1日が終わる前に運動中に減った分の水分を補給し終わらないと、睡眠中にさらに脱水が進み、翌朝は脱水した様態でスタートすることになります。

チェック12
1日の水分補給は、練習と同じくらい重要です。練習の内容等を「練習ノート」などに記録して振り返りをしているように。水分補給についても振り返りが大切です。

一日中気の抜けない水分補給

体内の水分は常に「IN」「OUT」が繰り返されています。特に「OUT」の方は、尿や便での排泄だけでなく、皮膚や呼気からの蒸発、寝汗などの不感蒸泄(意識しなくても出ていく水分)や気温に対応するための発汗があり、24時間生じています。

一方、「IN」は代謝(体内での化学反応)が行われるときにできる水以外は、口から摂取しなければなりません。この「IN」「OUT」のバランスが崩れると「脱水」となります。「OUT」が自分の意志とは関係なく生じていることを考えると、睡眠時以外の水分補給は気が抜けないと言えるでしょう。

さらに、運動中は体温が上昇するので発汗量も多くなり、その分の水分補給は必要です。練習時間に合わせて水分補給法も変えなければなりません。

練習時間に合わせた水分補給方法を図にまとめました。「運動しない日」「午後に運動する場合」「朝に運動する場合」の3パターンを挙げましたので、自分のスケジュールに合わせて参考にして下さい。

<水分補給時系列>

深部体温下げるアイススラリー

食事同様、水分補給の方法も体格や体調、環境によって個人個人で異なります。あなただけの水分補給の極意を身につけて、体調を崩すことなく、夏を乗り切りましょう!

今回、紹介するのは「スポーツドリンクのアイススラリ―」です。アイススラリ―は細かいシャーベット状の飲料です。凍ったものは液体よりも温度が低いため、深部体温が下がりやすく、効率よく体温を下げられます。

プロ球団なども取り入れている飲料で、市販もされていますが、手作りできるため、チームなどでまとめて必要な時には重宝します。寒天を入れて溶けにくくしてあるため、保冷の効く水筒などに入れておくと、ある程度の時間は温度が維持されます。

女子アスリート/管理栄養士・佐藤郁子